矢山行人 十五歳 夏34

 翌日、コンビニの前で美紀さんと会った。


 僕は学校帰りで、美紀さんは友達らしい女の子と喋っていた。

 美紀さんは僕の顔を見ると、友達に一言告げて、こちらに歩いてきた。嫌味のない完璧な笑みを浮かべていた。


「やぁ行人くん」


「こんにちは、新しい恋人ですか?」


「ん? 私に百合な趣味はないよ」


「そーですか」


「なんだか、すっきりとした顔をしているね。童貞でも捨てたのかな?」


「まぁ、そんなところです」


「残念だなぁ、君の童貞は私が貰いたかったのに」


「慣れてる男の方が好きでしょ?」


「んー、時と場合によるね」


「そーですか。ちなみに、ミヤは元気ですか?」


 美紀さんの表情が一瞬だけ固まったが、すぐにいつもの完璧な笑みに変わった。


「ぼちぼちだよ」


「良かったです」


「今度、ウチにきなよ。歓迎してあげる」


「わかりました。多分、僕もミヤも喋らないかも知れませんけど」


「でも、ちゃんと人と会うってのは大事だからね」


「そうですね」


「歩の姉だってバレたら言おうと思ってたんだけど、私、行人くんのお兄さんと付き合った理由、行人くんに近づきたかったからって訳じゃないからね。ちゃんと、君のお兄さんのことが好きな時期はあったから」


「そんなこと、考えていませんよ」


「なら良し。じゃあ、また今度」


「はい」

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