異世界管理事務

タノミ

第1話こんなの異世界じゃない

「全然ダメです。こんなのは異世界じゃないです」

その言葉と共にその世界は粉々になって消されていく....



「今回ので何作目だろうか....」と小さく呟くと

「充さんの作品ってストーリー自体はいいのにどうしてどれも異世界になってしまうんですか?」と聞いてきたのは僕の編集担当をしてくださっている加藤さんだ。

ここ一年近く新作を読んでもらってもいつもこんな感じだ。


高校生の頃、僕は夢に見ていたライトノベル作家になるためコンテストに応募した。

物心ついたころからのためたアイデアを使って

僕はひとつの作品を完成させた。

今でも夢なのかと思ってしまうがそんな僕の処女作品は新人賞を受賞したのである。

それからはとにかく必死で書き続けた当時素人の僕が出来ることはそれしかなかったからだ。

気が付けばそれから四年間、僕は自分の作品を出版出来ずにいた。


「異世界ものなんてもう今時古いですよ〜でも昔は流行ってたみたいですね異世界物の作品」

今は2149年、世の中はどんどんと発展し異世界なんてものがないと言うことまで証明されるまでになった世界

そんな世界で異世界を舞台にした作品を書いても当然受け入れられないのが現実である


「それでも僕は行ったんです異世界に!」

これは僕の口癖だ、当然異世界に行ったことなんてない

言わば負け犬の遠吠えだ


編集さんとの話が終わり通話終了のボタンを押す

本来なら会って話したいが今の新しい文化になれない僕は田舎のほうに住んでいた。


「あなた...な..ら....」

「えっ 加藤さん?」

切ったはずの通話画面が通話中のまま動いている

はじめ掠れていた声が徐々に鮮明になってゆく

「あなた....ならこの世界をかえてくれる?」

泣いた少女の声だった、今にも消えてしまいそうなその声を聴いた僕は気が付けば

「僕にできることなら協力するよ」と



これが採用面接だとも知らずに....

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