第2話 はじめての魔物
光が明け視界が確保される。
そして目の前の転生先は……墓地だった。
「あれ?ここ墓地じゃない。あなた相当運がないわね」
「昔から占いを外すのが趣味だったからそうなのかもです」
「いい趣味してるじゃない、悪い意味で」
冗談話の最中一つの墓からゴソゴソと気味の悪い音がなり始めた。
「す、すいません、あ、あれって噂のアンデット様ですか?」
「そうよ、穢らわしい醜い骨アンデット、ボーンアンデットよ、まるで今のあなたの様ね」
「酷くないっすか?」
やがて墓から出てきたボーンアンデットそれは1体だけでなく2体3体と次々と這い出てきて群れと成していく。正直アニメや漫画でしか見たことない存在だったが、美化されているためものほんのアンデットを目の当たりにしてみると気持ち悪かった。
「でも、まぁこの世で死んでいった人たちの死体だしまた土に帰してあげないとね。」
どこか悲しそうにそう呟くリンさん。
「私が聖魔法唱えるから少し離れてて」
そう言われリンから少し距離を置いた場所で見守る。
異世界転生初っ端から有名なアンデットや魔法を見られるなんて逆に幸運かもしれない。と期待と裏腹に。
「【ばいばい、アンデット】」
りんの周りには白い魔方陣が五角形に散らばり回転し始めた。
知性が皆無であろうボーンアンデットの群れはそのまま前進するのみ────
すると五つの魔方陣は瞬く間に分裂をしていくと、先頭に立つボーンアンデットの下に……浄化
その後も白いモヤを出しながら消えていく。
「ねぇあんたさ、これ終わっても絶対こっち来ないでね!」
わかったと返事をし目の前に起きていることに集中する。
初めて見る魔法、今は浄化魔法だが物凄い印象付けた。
数分後には事も終わりリンの元へ駆け寄った。が時は既に遅し────
「なんで裸なん?」
「こ、来ないでって言ったでしょっっ!!!!」
初めて見る魔法の後に初めて本気ビンタを味わった。副産物、驚きの後は眼福+痛かった……
ボーンアンデット撃退後、リンのあたりを照らす魔法頼りに墓地から出られるルートを散策。
明かりがいらない程自身が光っているのに気付かないリンさん……言わないでおこう。なぜなら人差し指突き上げて必死に照らしている姿がなんか可愛いから。
「ねぇ、さっきからなんか明るくない?あんた魔法使ってる?」
「え、いや、まだここに来たばかりですしなにも使えないですよ?」
そうよねーとブツブツ独り言を呟きながら歩いている。その後ろについて行く形で歩いていると前のリンさんが
「あったわよ!!出口!」
夜道で全く分からなかったが近くに寄ってみるとご丁寧に出口です。と看板が立てられていた。
「はぁ、やっと出れたー!暗いしそこそこ時間かかったわね」
「はい、ちらほらまたアンデットが出てきてましたけどリンさんの光のお陰で寄っては来なかったですよ」
「夜に行動するモンスターだし光には弱いのよ」
知ってて当然のことをない胸を張って言うリンさん。
「次はどうします?街に向かうのが定石だと思うんですけど」
「私自身ここに来るのは初めてだし疎いけど街のある場所なら勘でわかるわよ?」
女の勘はあたる。と偉い人は言った、だがこの人は別格だった。なんせ朝日が立ち上って気づいたけど方向音痴過ぎて元いた墓地前に来ていた。
「あれ?おかしいわね、ここ墓地前よね?」
「そーですねー、昔のドラクエによくあるその場で足踏みしたみたいですわ……」
「そのどらくえってのは知らないけどそんなに文句あるならあなたがやりなさいよ!」
女の勘はあたる。だけど1握りだけ。
そして、後ろで不貞腐れて膨れている(可愛い)を尻目に、道中で会った人々に聞き込んでいった。
聞き込みでわかったことは此処はすこし離れた墓地らしく、近くには街や村はないらしい。
「まぁ歩いておけばいずれ着くでしょ」
そう言ってスタスタ歩き始め、次なる目的地へ目指す。
墓地からは遠ざかりかなり歩いたと思われるが未だ、一向に街や村が見えてくる気配がない。
「あーおなかすいたぁー」
「そうですね、太陽のある場所を見る限りちょうどお昼頃ですし」
「そう……クンクン……食べ物の匂いがするわ!」
「わぁ!ちょ、どこいくんです!?」
一目散に駆けていくリンさんの足は欲求を満たそうと単細胞になったかのように走る為ものすごい速かった。
「ねぇねぇ!村があったわよ!」
「ゼェ……オェ……運動不足が走ると咄嗟に吐きそうになるやつやめて欲しいよ……って本当じゃないですか」
すこしどころではないがかなりボロボロに成り果てた村がそこにはあった。
看板は半分しかなく柵はあっても意味を成していないくらいぐちゃぐちゃで、家はどの家も所々天井部分や壁に大穴が空いている。
「えぇ、ここ大丈夫なんです?すんごいボロボロですけど」
「間違いないわ、これは私の勘が告げているもの」
「リンさんの勘あてにならなかったじゃないですか……」
「あれは暗かったから仕方のない事だったの」
暗くはなかったけど、なんせリンさん光ってたし。
ところでちっとも村の人達の姿は見えないがなにをしているんだろ?と疑問に思った矢先リンさんが村に突入していく。
「いくらなんでも横暴だよ……」
人っ子誰一人外にいないため不気味で仕方なかった。呼びかけても返事なし。ノックしても応答なし。なんか人が倒れてて話しかけても返事がなかった。なんだただの屍か。
「って冗談言ってる場合じゃなかった!?リンさん!ここに人が倒れてます!」
「あら、ほんとね、じゃあ【蘇れパンパン!きゅるんっ!】」
「え……?」
赤面しながら静止しているリンさんの下でピクピクと動き始めた。
「うぅ……あれ、俺ここでなにしてたんだ……?」
「おはようございます。いまここであなたが倒れてたから私が起こしてあげたの。そのお礼としてなにか食べ物はないかしら」
「なんと、この俺が倒れていたとは、やはりこの村はもう……いや今思いつめても仕方のない事、いやぁこんな美人に助けて頂き光栄です。すぐそこに私の家があるのでお礼として最大限のおもてなしをさせていただきたい」
「わかったわ。案内して」
「蘇れパンパン、きゅるん」
先ほどの呪文を口にした途端そばからすごい勢いの蹴りが繰り出されみぞおちに綺麗に入った。
なぜきゅるんの部分言ったときあんなに生き生きしてたんだろ?。
しばらくして倒れていた男の人から手厚い歓迎を受けた。ご飯やお風呂まで至れり尽くせりだった。
「初めて異世界でお風呂に入ったけどやっぱり魔法で水を沸かしてたんだ……」
あまりにもの感動に震えている。
だってかっこいいじゃん?
「あんた人生楽しそうね」
「楽しいというより飽きないですね」
「あ、お二人共湯加減どうでしたか?私は火の魔法が得意でして、絶妙な湯加減にできるため周りには【湯の魔術師】と呼ばれていたくらいですから」
はっはー!と笑う男の人に向けるリンさんの視線はなぜか痛いものを見る目だった。
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