天使と転生したらあんなことやこんなことになっちゃう?

あーや

第1話 始まり「転生」

何もない平穏な日々。

季節は夏、仕事で汗をかき暑さに耐えながらもこれからのためみんな頑張っている。 そんな当たり前の日常で生活をする、これはとある男子高校生の話である…… 今年は連日猛暑日が続き、熱中症患者が続出。主人公、多麻美千流もその1人で、病院で診察を受けていた。


「目眩と頭痛と手足の痺れですか……」


「はい、昨日学校の帰宅途中に急に視界が揺れはじめまして、僕自身これはダメだと思い最寄りの自販機で水を買って飲みました。」


「その時は目眩だけでしたか?」


「そうですね、まだ手足の痺れもなかったですし頭も痛くなかったです。だけど、帰宅した後頭痛と痺れに襲われましたね」


「急な温度差の変化かも知れませんね。その時家の温度はどうでしたか?」


「正確な温度はわかりませんが、親もいましたしクーラーが効いてました。」


医者の無精髭を生やしたおじさんもやっぱりですかと気の抜けたように言いました。

今年は過去最高気温を記録し、去年より熱中症患者が増えて皆同じ症状、同じ過程でなっている様子。

「これは完全に熱中症ですね……」

僕のカルテをりっぱな髭を触りながらそう呟いた。

何十回も同じ言葉を言ってきたのだろうか。その言葉にも「やっぱりか」 が混じっているように聞こえてくる。


「とりあえず、お薬だしておくんで毎日朝夕晩飲んでください。あと外に出る際はこまめな水分補給を忘れずに」


「わかりました、ありがとうございます。」 と診察を終え支給された薬を貰い帰路についた。

地元は割と温度は都会より低いはずなのだけれども、33℃以上ある。帰るさなか散歩中のおばさんの犬もグッテリとして、楽しい散歩も台無しそうだった。


ふと空を見上げる。するとなぜかオレンジ色をした夕焼けが螺旋を描くように回っている。

「また目眩か?」

そう感じた瞬間、当たりが真っ暗になった。

「んんッッッ──!!??」

口が重たく驚きの言葉も出ない。手、足、首全部固定されたかのように固まって動けない。辛うじて目と耳と呼吸、後は考えることだけはできる。だが、目の前は真っ暗で瞬きをしている感覚だけしかない。

果たして自分はいまなにがどうなっているのか?

「次は、あなたですか?今回は迷い人が多いですね、さぁこちらへ」


どこからとなく美声が聞こえる。特徴的な高い声、女性だろうか? その疑問は瞬間的に明るくなった後にわかった。


「初めまして、迷い人さんもう何回目でしょうか。あなたと同じような方たちが迷い人としてこの世界にやってきます。」


目の前には羽が生えた女性が3人机の前に座っている人が一際大きな羽をしていた。


「すみません自己紹介が後回しになってしまいましたね、あまりにも人が多いものでつい愚痴がでてしまいました。私の名前は、ネイトと申します。」


そう名乗った女性は、いわゆる有名な偉大なる母の女神──ネイト。女神だった。


「このあとの書類整理大変なんだからちょっとはなんとかしろよ……ホントマジで……」


「ネ、ネイト様!?」


「えっ?あ、あはははっすみませんねつい私としたことが」


その美形美声から考えられないブラックな一面を目の当たりにした僕は女神様だって嫌なことはあるんだなと思った。


「あ、あのネイト様僕はこれからどうなるんですか?」


「えーっとですね、今から貴方には2つの選択肢からこれからの事を選んでもらいます。ですがまずあなたのお名前と好きな物をお聞きしたいと思います」


「はい、僕の名前は多麻美千流で、好きな物は小説です」


毎日教室の隅っこで誰にも声をかけられずいつも1人で読む小説が好きだった。

主人公が突然魔法が使えるようになりそこから強くなるっていう系統が特に。


「なるほどわかりました。それでは今から多麻には人生が変わる選択肢を選んでいただきたいと思います。まず1つ目は剣や魔法が存在する世界、お好きですよね?そして2つ目、これまでにないほど女の子に好かれでモテるハーレムの世界」


「2つ目の説明って毎回この説明の仕方なんですか?」


「そうですよ?まぁまぁそれはさておきどうしますか?モテますよ?」


「やたら押しますね……僕は一つ目がいいです」


小説読んでたり、アニメを見ていたりしたらわかるはず「1度は魔法を使ってみたい」とこれがわからない人は現実逃避だの非現実的だの言われる。

ただ憧れとして言っているのに罵倒罵声を浴びせるリア充共。


「わかりました。それでは貴方はなんの才能が欲しいですか?必ず1つお願いします。」


「あれこれ出てきて思い付かないのであれば持ち込みたい物でもいいですよ」


「なら魔法を使える才能……ですかね……」


「はい?それでいいのですか?最強になりたいーとか金持ちになれる才能がいいーとかある……ありますでしょ?」


「まぁ僕は憧れの魔法が使えたら十分ですよ。その後はその後で考えます」


実際、オンラインゲームなどでは必ずと言っていいほど魔法職を選びちまちまと効率が良い悪い関係なく自分が楽しめたらいいやと思いながらプレイをしてた。


「なら準備は早いですね。そこの二人とも、多麻をあのお部屋に」


ずっと微動だにせず女神──ネイトの側に立っているだけだった付き人がついに動き始めた。


「初めまして、私はソルこちらは妹のリンと申します。」


二人とも礼儀正しくネイトさんと比べ美人というより可愛い系の子、歳は僕より断然下に見える。


「すみません、妹のリンの方は話して大丈夫と許可を出すまで話せないんですよ」

するとネイトさんがニコニコしながらもういいわよと口にした途端。


「あー!ほんっと窮屈ったらあらしないわ!どれだけ私に話して欲しくないのよ!!」


先程の清楚な繕いが嘘かのようにもの凄い早口で話し始めた。


「ネイト様もネイト様よ!ハーレムを選んだ男子はどっか連れていくし、その際ソルはトイレに行くと言って長時間戻ってこないで私に仕事全部押し付けるは、もううんざりよ!!私はこの人について行くわ!」


さり気なく闇の中の闇を垣間見た気がするけど怖いのでつっこまないでおく。


「ソル!あんたはここに残ってネイト様と仲良く遊んでおきなさい!そして君!行くわよ!」

僕の腕を強引に引っ張り先の魔方陣へと向かった。


*

「さてと、もう向こうの世界に行けるけども準備はいいかしら?」

魔法陣のど真ん中で仁王立ち姿で尋ねる女神の使い──リン。

「ところで、あのお二人を置いてきてよかったのですか?」

リンの隣で三角座りでそう尋ねる僕──多麻美千流

「いいのよ。たまには真面目に仕事をさせたらいいのよ」

呆れたように肩を落としながらそう言うと魔法陣が起動した。

「まぁ今から行く世界の説明は後回しね!」腰に手を当てニコッと小悪魔な笑を見せて僕らは光に包まれて言った……。

ここから、僕は新たな世界を目の当たりにすることになる。知らない物知らない人々に触れ合いながら────

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