一つの窓から見る景色
不律 翔り
明日はどんな表情しているのかな
病院のこの窓から見る景色はそこらの景色とは違い特別なものだと思う。それは、この窓には顔があると、思うから。
この病院は町の少し外れたところにあって回りは低いビルやマンションみたいな建物しかない、なんで公園とか緑あるものがないのか、時々ここが実験施設で本当は大きな箱の中にいて、本当の外の世界を見てないんじゃないかって思ってしまう。それほど僕が病医院で暇だってことだ。でもこんな箱と思えてしまう景色にもよく観察するといろんな表情を持ってる。そこにある一本の道にも車が通り人が通る、。上を見ると青かったりあかかったり小さな星がきらきらしてたり。その組み合わせはこの白い窓辺に同じ表情を持たせることはない。この観察するだけの毎日を僕は楽しんでいた。
不意に足音が聞こえ、後ろを向くとパジャマ姿の同じ部屋の患者さんが部屋に戻っていった。僕もそろそろ部屋に戻るか。医師にあまり無理するなって言われてるし、一応明日は朝一から手術だ。何回もやっている感じからしてどうせ成功しても少ししか寿命が伸びないだろうな。最後に表情を目に焼くつけてから病室に戻た。
誰もいなくなった窓辺のある寂しい空間には、
一輪だけ花瓶に生けてある真っ赤なアネモネがひとり揺れていた。
一つの窓から見る景色 不律 翔り @huritu
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