14p
ジャリッ
ジャリ! ジャリ! ジャリジャリ! ジャリ! ジャリッ!
(ひいぃぃぃぃっ!助けてっ !助けてぇっ!)
足音は、彼女の近くで止まった。
急に静かになり、彼女は固まる。
穴の中に居たのでは少しも様子を知る事が出来ない。
ここで出来る事と言えば、ただ黙って危険が過ぎて行くのを待つ事だけだ。
ここで見つかったりしたら終わりだ。
見つかったら、あの男に何をされるのか?
考えただけでも恐ろしい……。
彼女は付き纏う恐怖を振り払う事が出来ずに、そっとそこにうずくまった。
息を殺し、両手で自身の髪を鷲掴み、顔を歪ませて、土臭い臭いを鼻から吸い込みながら、前後左右、土で囲まれたそこに、日の有る内は、何か別の物が……キラキラと光り輝く眩しいモノが詰まっていた筈の、そこに、今は恐怖が詰め込まれている、深い穴に、体を震わせて彼女はうずくまっている。
(助けてっ! 助けてっ!)
そう叫びたいけれど、許されない。
少しでも物音を立てたなら気付かれてしまうから。
だから、彼女は穴の底で静かに、静かに、そこにいる事しか出来ない。
隠れんぼするみたいに。鬼が過ぎるのをそっと待つ子供みたいに。
静かに、このまま時が過ぎるのを待つしか無いのだ。
どれ位時が過ぎたのか?
彼女を探して公園の中をさ迷う足音はもう消えていた。
しかし、油断は出来ないと、彼女はずっと穴の中に潜んでいた。
彼女の体はもう震えてはいなかった。
少しずつ、彼女は冷静さを取り戻していた。
(そうだ! ケータイ!)
彼女は地面に転がっている自分の鞄をそっと手繰り寄せ、スマートフォンを探す。
(有った! これで助けを呼べば!)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます