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 一人が好きな子のそばによって行って、無神経に話し掛けたりする事は、瞳はしなく無いと思っていた。

 そもそも、瞳は、良のする事に興味など無かった。

 だから、今日、瞳が良に声を掛けたのは、ほんの気紛れだ。

「ねぇ、りょう君、それ何?」

 瞳は、良の掘った穴の直ぐ側に落ちていた物を目敏く見つけて言った。

 良は、それを手に取って、瞳に見せる。

 ブローチだ。

 蝶の形をしたそれは、土で汚れていたが、赤い小さな石の様な物を幾つも並べ、それを金で縁取った凝った作りの物だった。

 それは、太陽の光を浴びてキラリと輝いている。

「宝物だよ。穴を掘っていると、たまに出てくるんだ! 綺麗な色の石とか、キラキラ光るガラスとか」

 良は自慢気に言って、ブローチを瞳に手渡す。

 瞳は、それをジッと眺めて「キレイ……」と呟いた。

「だろ? それ、今日の一番の宝物だよ。気に入ったなら、ひとみちゃんにあげるよ!」

「本当に? 嬉しい! 有り難う、りょう君! でも、良いのかな? これ、持ち主がいるんじゃないの?」

「僕が掘り当てたんだから、僕の物だよ。僕の物をあげるんだから、もう、ひとみちゃんの物だよ!」

 良が自信たっぷりにそう言った。

 瞳は、小さく頷くと、ブローチを大事そうにポケットにしまい、「じゃあ、貰うね」と笑顔で言った。

「ねぇ、りょう君、宝物って、沢山出て来るの?」

 瞳は、手をポケットに入れたまま、ブローチを撫でながら言った。

「毎日じゃあ、無いけど、沢山見つかる時も有るよ」

「ふうーん……」

 良の台詞に、瞳は少し考えた後、目を輝かせて、こう言った。

「ねぇ、りょう君、その遊びに私も混ぜてよ! 何だか、凄く楽しそうだし、私もやりたいな。ダメ……かな?」

 そう言われて、良は、ジッと瞳の目を見詰めた。

 そして、ニッと笑うと、「良いよ!」と言った。

 瞳は、飛上がって喜んで、「じゃあ、私もシャベル借りて来るね!」と言って、校舎の方へ駆け出した。

 こうして、良と瞳の二人きりの遊びは始まったのだった。

 瞳がシャベルを持って戻ると、二人は、暗くなるまで、無我夢中で穴を掘り進めていった。


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