第10話 さくらへ

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さくらへ


俺は、今から11年後、つまり

未来から来た[未来人]です。


何も言わず1ヶ月居なくなってごめ

ん。これから、直接伝えられなか

った真実を伝えます。


俺は[未来人]です。

いきなりこんなこと言っても、訳が

分からないよな。でも本当。今から

11年後、2030年にはタイムマシー

ンができています。本当は考古学者

や国のお偉いさんしか乗れないんだ

けど、俺の父さんが考古学者だから

忘れ物を届けることを理由に施設に

侵入して、タイムマシンに乗って1

年前にこの時代に来た。

俺は家出してきたんだ。親が暴力を

振るう人で束縛が厳しくて逃げたか

ったから。でも、未来の警察に居場

所がばれちゃって、もう帰らないと

いけない。そしたらたぶんあの人た

ちは、俺をもっと、束縛すると思

う。


だからきっともう会えない。


でも、だからこそ、真実を話そうと

思ったんだ。タイムマシーンを使う

にはルールがあって、それは“この真

実をその時代の人に知られてはいけ

ない”ということ。ルール違反者は

タイムマシーンを使えなくなる。で

も、俺にとってはそのルールを破ろ

うが破るまいがもう、タイムマシー

ンは使えないから。


それに、さくらに本当のことを知っ

てほしかった。ありのままの俺を知

って欲しかった。



きっとこの手紙を読んでいる頃には

俺は未来に向かっていると思う。


もうきっと会えない。

会うことはない。


それでも

ずっとずっと

どこにいたって

いつにいたって


さくらが好きだよ。




佐藤二郎





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