往ぬ陽炎

夏の足音が聴こえて

 ぼくは目を覚ます

  汗ばんだ首筋に

   梅雨の忘れ物

    春の抜殻が

     木に眠る

      セミが

       鳴く

        夏

そのにおいを嗅いで

ため息は蒸発した

アスファルトが

陽に焼かれて

世界が踊る

子供達が

抜殻を

潰す

青い風が髪を撫でて

 夏が好きな彼女は

  何も鳴かない夜

   花火と夜空に

    儚く消えた

     青い空が

      ぼくを

       笑う

        夏

その泣き声を聴いて

思わずハッとした

春を失ったのは

みんな同じで

この台風は

夏の叫び

近づく

終夏

みんな枯れ始めてさ

 夏は背中を見せる

  手を伸ばしても

   もう届かない

    過ぎる季節

     かげろう

      さらば

       やあ

        秋

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