ブレックファースト


 ただ電車に乗っていた。

通勤ラッシュも終わり始めていた午前9時過ぎ。車内に人はまばらだ。

耳につけたイヤホンからはいつもの音楽が流れている。

自分の目の前にある窓から見える風景は都会ではなく庶民的だった。

ワクワクとドキドキが止まらない。


「次は武蔵関、武蔵関、出口は左側になります」


車内アナウンスが流れ、いよいよだなと手をぎゅっと膝の上で握った。


-


ホームに着いた車両から降りる。

一つ呼吸をする。


「ついにきたよ」


周りは真白。あの時と同じような真白を目で追いながら、

改札に行けるよう、エスカレーターに乗った。


-


 歩いてきた境内の中に一つベンチがあった。一息つけるなと思って駆け足で向かった。


晴天雲一つ無い空を見上げ思わず微笑む。


「今日もいい天気だなあ」


木製の古いベンチの端に持っていた荷物鞄を降ろし、自分も座った。


「ふぅー」


巴積は大きく息を吐いた。


緑々とした広い空間には人影も無く自分しかいなかった。


-


 荷物の中からココに来る前に駅前のパン屋でかったフレンチトーストを取り出し、そのままかじった。


大量の砂糖がかかってるおかげで口に入れた瞬間から甘さでいっぱいになり、

甘党の自分としては大満足の一品だった。


気が付くと3切れほどあったのが、跡形も無く巴積のお腹の中へと吸い込まれていった。


「神社で洋食か……うふふ」


なんだが変な組み合わせだなと思いながらバックから取り出した濡れティッシュで口を手を拭く。


緑々と生い茂った木々の間から光が照らし出された境内は程よく暖かかった。


午前10時30分、少し遅めの朝食をとった。

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