由巳と千秋

相田秀介

小説よりかはシナリオ風。


01. タイトル 由巳と千秋

背景 昼下がりの幼稚園の中庭。

少女 月島由巳つきしまゆうみ(5歳)が一人で人形遊びをしていると、少年二人組みが彼女に近づいてくる。


02. 中庭の隅。

「へへっ、それぇ!」

「あ、私のお人形さん…」

少年A、由巳の持っていた人形を分捕る。

「かえしてよ、かえしてよ」

由巳、おどおどする。

少年A、人形を持ったまま遠くに走っていく。

「返して欲しかったら、ここまでおいで!」

少年B「あいつのろまそうだから、無理だよ、和紀かずき!」

二人、はははと笑う。

由巳、半泣き。


03. 千秋登場。

少年二人組み、由巳から分捕った人形を蹴ったり、殴ったり、投げ飛ばして遊んでいる。

由巳、うずくまって泣く。

「ううっ…」

二人組みと由巳との距離、5~10mぐらい。

そんな中、一人の少女 桐野千秋きりのちあき(5歳)が男二人組みに近寄る。

「ちょっと、人のものを勝手に盗んで何してんのよ!!」

威勢のよい声に驚き、和紀、放り投げた人形を捕り損ね、落とす。

少年B、驚きの声をあげる。

「うわっ! 桐野だ!」


04. 決闘

千秋、和紀の元へ。

和紀「な、何だよ!」

千秋「女の子一人に二人でかかってんじゃないよ!」

千秋、和紀を突き飛ばす。

「うわっ!?」

和紀、倒れる。

「こいつ、やったなぁ!!」

和紀、立ち上がり千秋に掴みかかる。

が、しかし、勢いあまって一緒に倒れる。

千秋「やったねぇ、負けないよ!」

倒された状態で相手の右頬にパンチを繰り出す、千秋。

和紀、肩から手を放し、横に転がる。

「お、女のくせに!」

二人立ち上がり、一息とってから格闘。

千秋「あんたみたいなやつに…!」

片方蹴ると、もう片方も蹴り返す。

片方殴ると、もう片方も殴り返す。

5~6分、その状態が続く。

しまいには、互いに互いの頬をつねる。

千秋「このほぉ…」

和紀「こうりょくほんな…」


05. 先生登場

先生、二人の取っ組み合いを発見し、急いで走ってくる。

「ちょっと、千秋ちゃん、和紀くん、何してるの!」

相川実久あいかわみく先生登場。

千秋「うぅ…」

和紀「ぐぅ…」

二人は頬をつねったままビクともしない。

由巳は泣きやみ、もう一人の少年と共に事の激しさに唖然。

実久先生、間に入る。

「二人とも、手を放しなさい。はい! はい!」

先生の声に合わせて、千秋、和紀は互いの頬から手を放す。

「………」「………」

二人、ぶすっとした表情。

先生見かねて。

「もう、何で喧嘩なんかしたの? どっちがいけないの?」

千秋、和紀を指差す。

「こいつが、あの子の人形を取ったんです」

「あ、あれは、あいつから借りたんだよ!」

和紀、あわてて答える。

実久先生、由巳を呼んで問いかける。

「あなた、そうなの?」

「え、ううん…。勝手に人形を持って行ったの」

先生納得。

「そうなの」

和紀、由巳をにらみつける。

「!!」

千秋、驚いてる由巳を横からかばう。

実久先生「和紀くん、人のものを勝手に取らないっていつも言ってるでしょ! ごめんなさいってあやまりなさい!」

「やだね! 俺悪くないもん!」

和紀、必死の抵抗を見せる。

「和紀くん!!」

大声で怒鳴る実久先生。

和紀、しぶしぶ先生の言うことを聞き入れ、分が悪そうに由巳の前に来る。

「わ、わるかったな…ゴメン」

一言そう言った後、仲間を引き連れ、一目散に逃げ出す。

それをだまって見届ける由巳と千秋。

千秋「ざまあみろ!」


06. 由巳と千秋の出逢い。

事も一段落し、実久先生、教室へ戻る。

その中庭の場には、由巳と千秋が残っていた。

「ふぅ…」

千秋、落ちている人形を拾い上げ、汚れを払う。

キョトンとする由巳。

「はい、これ。あなたのでしょう?」

拾った人形を由巳に差し出す。

「う、うん…」

人形を受け取る。

「ねぇ、あんなのにさ、負けちゃ駄目だよ!」

うつむく由巳。

「……………」

それを見て驚く千秋。

「あ、あれ…。私、変なこと言ったかな…」

由巳つぶやく。

「わ、私…あなたみたいに取り返す勇気ないし、人を叩くの嫌だし…」

千秋、あきれる。

「ふぅん…そっか、見たまんまだね。えへへ。」

「うん…」

由巳、軽くうなずく。

「私ね、3組の桐野千秋って言うんだ」

千秋、元気よく自己紹介。

由巳、千秋からの突然の自己紹介に驚く。

「あっ…わ、私は…」

お返しに自分も名前を言おうとするが、なかなか言えない。

千秋「うん」

千秋の相槌。

しばし黙った後…由巳、覚悟を決めて顔を上げる。

「私は…由巳。2組の月島由巳です!」

「由巳って言うんだ。名前、可愛いね、えへへ」

千秋、にっこりと笑い、自分の顔を近づける。

「じゃあさ、由巳ちゃん。今から一緒に遊ばない?」

「えっ?!」

由巳、驚く。

しかし、ちょっとした後に笑顔で答える。

「うん、いいよ! 一緒に遊ぼう。千秋ちゃん」

「決まり! だったら、中で絵本読もうよ! 面白いのあるんだ」

千秋、強引に由巳の手をとる。

二人は手をつなぎ、教室へ走り出す。


了…。

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由巳と千秋 相田秀介 @nanado

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