京子さんはただの探偵です!
@848
第1話 始まり
「待ってくださいよ〜」
後ろから、聞こえてくる少年の声を無視しながら彼女は、事務所への帰路を歩いていた。
「今回も無事解決したのになんで不機嫌なんですか〜。」
再度、少年が声を掛けてくる。
……毎度毎度、変な依頼を持ってくる君のせいだよ。
そのことを自覚しているのだろうかと考えつつ、ふと。
……そういえば少年と出会ったのは、いつだっただろうか–––。
パッと思い出せないのは歳のせいではないと自分に言い聞かせながら、
彼女は、思い出そうとした。
あれは確か–––。
▼
「暑い……。」
……どうしてこんな暑い日にエアコンが壊れるんだ。
彼女は、使いたい時に使えなくなったエアコンの睨んだ。
……これでは依頼がきても、まともに対応できるきがしないな。
動かなくなったエアコンから視線を外しつつ、
–––まあ、依頼なんかしばらく来ていなのだがね……。
しばらく自分と大家さんしか通っていない事務所の入り口を見て思った。
「何故、こんな美人が居るのに誰も依頼しに来ないんだ!!」
暑さでつい声を出して言ってしまって居ることにも気づかず、頭を抱えて机に伏した。
彼女、橘京子が居るのは、この街の外れにある小さな探偵事務所である。
昔から探偵に憧れていた彼女は、大学生活中にアルバイトをしてお金を貯め、
そして大学卒業後、事務所を探している時に知り合った大家さんに、今の事務所を安く借りさせてもらった。
順風満帆に事務所開設まで進んだ彼女は、
……このまま美人女探偵として宣伝すれば、依頼者もくるはず–––。
彼女はそう考えていた。
が、事務所を訪ねてくるのは、セールスの勧誘と大家さんのみという現実だった。
「浮気調査と人探しの依頼ぐらいはくると思ったのだがな…。ちょっと平和すぎないかこの街は。」
いつもように普通の人であれば言わないであろう平和に対して、愚痴をこぼしていると誰かがドアから入ってくる音がした。
……チャイムを鳴らさないということは、また大家か。また、からかいにでも来たのか……。
入り口の方を見ると、やはり大家だった。
「相変わらず暇そうね」
「暇でわないさ。こうして、コーヒーを飲みながら平和を噛み締めていたのだよ。」
「そうなの?。さっき、「ちょっと平和すぎないかこの街は」なんて聞こえた気がするのだけど…気のせいだったかしら?」
——ドアの前で聞いていたな。
「そうだったかい?気のせいではないのかな。」
「気のせいねー……なら、平和を噛み締めていたあなたには、この依頼を任せるのはかわいそうね。」
——依頼だと!?
「さて平和を堪能するのはやめて、仕事をしようかな!。それでどんな依頼なんだい?人探し?浮気調査?もしや、殺人事件の調査かい!。」
初の依頼に胸を踊らせ、……ここから私の華々しい名探偵橘京子の探偵生活が!——
「どれもハズレよ。」
始まらなかった。
一瞬にして希望を打ち砕かれたが彼女であった。が、まあ依頼がきただけマシかと考えを改め、大家に質問を投げた。
「では、何だって言うんだい?」
「私の口から説明してもいいのだけれど、依頼者を連れて来ているから直接聞きなさい。……入って来ていいわよ!」
ガチャリと、ドアを開ける音が聞こえ、さて初の依頼人は誰かなとドキドキしながら、そちら方を見ると、そこにいたのは、高校くらいであろう少年であった——。
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