致死と毒薬

八月文庫

終わりの果ての景色


「泣いてるのね。私の可愛いあの子・・・」


遠く、遙か彼方まで延々と続く草原。

その中で異質な彼女は、ちょっとだけ微笑んだ。


「ふふふ。優しい子。泣かなくて、いいわ」


『行かないでください・・・!』


最後に聞いた、悲痛な叫びが耳の奥で木霊した。

あの日からずっと、あの子の泣き声が耳から離れない。

もう二度と、涙を拭って頭を撫でてあげれないことが残念だった。

でも、それよりも見たい景色ができてしまったので。


「大丈夫。世界はずっと残酷だけど。優しい顔もしているよ」


風が、彼女のケープをはためかせた。

帽子をさらい、どこか遠くへ運んでいく。

広がった濡羽色の髪は、さらりと零れ落ちた。


「愛しているよ。君のこと。・・・もう、届かないかな」




そうして、彼女は果ての世界を歩きはじめた。



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