S.爪(5分)

爪を剥がすのが楽しいのだという。

「死んだ生き物のね。虫でも鳥でもいいんだけど、できるだけはっきりと指の形があって、その先から角質の塊を引き抜いて、肉が糸を引くのがたまらないんだ」

Sさんは喜々としてそう語った。

「でも最近はそうそう動物の死骸も落ちてないでしょ?」

「そうでもないよ。この辺みたいな都心じゃ、ちゃんと掃除されてるみたいだけど、僕が住んでるような郊外行けばまだまだ大きな公園なんかもたくさんあるし」

なければ作ればいいのだという。

「作る?」

「ハムスター飼ってて――」

爪って結構すぐ再生するから、と。

「そのうちエスカレートして、人間の爪も剥がしちゃうんじゃない」

「冗談。そこまでサイコじゃないですよ」

そう笑うSさんの指先に、厚く包帯が巻いてあったのが気になって仕方なかった。

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