H.冷臓庫(10分)

Hさんは昔、重ねに重ねた借金が焦げ付いて明日消されるか明後日消されるかという瀬戸際に立ったことがあるという。

「でな、もうどうしようもねぇし体力も頭もねぇからオマエ一年くらいレイゾウコやれって言われて」

海外の貧民街に飛ばされて手術を受けたという。

「そういうとこにはジンゾウとかハイだとか売りたがる連中がわんさといる。でもそういうナカミ買いたい連中の国で直接買うのはオマワリさん捕まっちゃうから」

間にHさんのような人間が入れられて、臓器の運び屋をさせるのだという。

「腹ん中に無理やりジンゾウだのカンゾウだのを入れて適当なケッカンと繋げちまう。すると下手にレイトーするより腐らないし、何よりゼーカンもかんたんに通れるようになるから」

国内に新鮮な臓器を運べるようになる。

「一個ハコぶたびに百万減らしてもらって七回運んだ」

終わった時には開けすぎた腹の傷口がガバガバに腐りかけていて、縫っても引っ付かなかったという。

「仕方ないから、カワちょっと削って引っ張って、腐ってないとこ引っ付けたってよ。その前には、ゾウキ入れる隙間空けるためにナカミもあちこち売っちまったからな。もうニクブクロだよ」

自力で立ち上がることも出来ない公園の片隅で、Hさんは歯のない口元をカハと咳こませた。

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