夏の夜空の一夜夢。
椿 梨乃
第1話
寂しがり屋の構ってコール
10秒で受話器を取り上げるわ
お代はキスで 真夜中のブシーキャット
赤い夜に溺れるより
ブラッディメアリーの髪の毛に埋もれたい
ほんの少しでも甘い夢が見れそうだから
桜色の恋は詰まらないわ
重たいタールとチョコレートの混ざった
大人の味が好きなの
ラム酒は程々にね
盗んだバイクより、スポーツカーが好き
そろそろ充電が切れてしまいそうな夜
瞳がとても綺麗だったから
本当はホルマリン漬けにしたかった
でも、そうしたら
二度とあたしのことを愛しさを込めて
見つめてくれない、って分かってるから
我慢してぺろりと舐めた
あたしの小宇宙
嗚呼、蠍が燃えている
髪を振り乱してダンスを踊った
相手なんていないわ
気が狂った女の一人遊びだから
舞い散る香水と、フィズの匂い
ノスタルジーに浸ってたら息が詰まる
早く外に出よう
汗は拭かなくても良いから
湖に落ちるような真似なんてしない
女の子だから 慎重なの
ただ目を細めて笑いかけるだけで
全てを手に入れたい
爪先ひとつで牛耳って
指先ひとつで壊したい
女の子だから 残酷なの
何時だって言っているでしょう?
遊びたいのは私だけだ、ってこと!
賛辞なんて聞き飽きてる
女の体は褒め言葉で出来てるもの
ボタン一つの好意と同情
寄せ集めて煮込んだのが女なの
綺麗、なんて一言は
何の足しにもなりゃしない
花束を放り投げた
真っ白な百合の花
私には少し早すぎたみたい
女の人にはまだなれないわ
少女のままで居たいとまだ思ってる
妖精の粉も楽しいことも
何処かへ置いてきてしまったけれど
それでも私は少女の翼を持ってる
ツンと澄ました小綺麗な翼を
さようなら
大声で叫んで薔薇の花散らす
さようなら
青空が目に染みて涙が出た
さようなら
大好きだった人 また会いたい人
さようなら
すべて背中に押し込んで夢に溺れた
さようなら
私は王子様の居ないシンデレラ姫
二度と再びお目にかからないでしょう
夏の夜空の一夜夢。 椿 梨乃 @ariake_sora
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