せみ少女
冬石
第1話 目覚め。
彼女と出会ったのは、ちょうど夏の初めだった。
《せみ少女》
蒸し暑さに目がさめた。
そこは黒一色だった。
わけがわからず、まばたきをする。
熱い。
なぜか体が思うように動かない。
頭が痛くなる。
私はどこにいるのかしら。
考えてみるがわからない。
思い出せない。
何も。
ただ、ここから出なければと思った。
何が起こっているのかわからない以上、外に出て把握しなければならない。
水はあるだろうか?
喉がかわいた。
風は吹いているのだろうか?
体が疼く。
陽は輝いているのだろうか?
恋しい思いに駆られる。
全てを感じたい。
この体を、この五感を、太陽と風の元に晒したい。
行かなければ。早く、行かなければ……。
どうして?
どこへ?
わからないが、今動かなければならない。
今すぐにだ。
本能が、そう叫んでいる。魂が光を欲している。
「行かなくっちゃ……」
思いが言葉になった。
口が動いた。
我武者羅になって四肢を動かす。
固い何かにすぐぶつかる。
がんがんと叩く。
手が痛い。
痛いと感じることさえ、今は感動に変わる。
出たい。ここから出たい。
出なくては。
必死にもがいて暴れてぶつけた。
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