暁の空の下で
@rearAlice
プロローグ
ここ蓮華国の彩架城では明日行われる開花祭りの準備の為、慌ただしい空気で満ちていた。
「姫さま、出てきてください」
侍女ミラサのそんな声が聞こえたがソラナはミラサに見付からぬよう息を潜めながら草陰に隠れていた。
蓮華国の姫であり現国王の跡継ぎであるソラナは今行われている話し合いから逃げ今に至るというわけだ。
「本当、嫌になっちゃうわ。話し合いなんて私が参加する必要ないじゃない」
彼女は草陰に隠れながらそう言うと後ろに人の気配を感じゆっくりと振り返った。
「姫さま、そんなところで何をやっておられるのですか?」
「シ…シラン。驚かせないでよ」
ソラナはそう言い幼馴染であり、ソラナの護衛である背の高い黒髪の男(シラン)を見た。
「すいませんね〜姫さま」
「何かムカつく…」
ソラナはそう言いシランに座ってと言った。シランは何故こんな所に座らなければならないのか分からず首を傾げたがソラナが睨みつけてきた事によってシランは仕方なく座った。
「姫さま、もしかして今行われている話し合いから抜け出して来たのですか?」
シランがそう言うとソラナは何も言わず頷いた。そんなソラナを見てシランは呆れに似たため息をついたが、ソラナはシランのため息など聞き飽きているから、それほど気にせず草陰から侍女ミラサの様子を伺っていた。
ミラサがまだうろついている為、ソラナは草陰に隠れながら念を送っていた。少し経ちミラサが諦めたように立ち去るとソラナはほっと息を吐き立ち上がった。
「シラン、もう立っていいわよ」
ソラナは隣に座っているであろうシランにそう言ったが、返事はなくソラナは隣を見た。
「い…いない」
ソラナがそう言うのと同時にさっき立ち去って行ったミラサがシランと共に戻って来た。ソラナは慌ててまた草陰に隠れようとしたが
ミラサと目が合ってしまい。
ソラナは仕方なくミラサがソラナの前に来るまで待っていることにした。
「姫さま、何処に隠れておられたのです?」
ソラナの侍女であるミラサがそう言うとソラナはミラサの隣に立っているシランを見て言った。
「シラン、お前が伝えたのね。私がここにいるって」
「はい。有り難く思ってください」
シランは何処か楽しそうにそう言いソラナを見た。ソラナはそんなシランを見て何か言葉を発しようとしたが、侍女であるミラサがシランに礼を言いソラナを引っ張るように歩き出した為、ソラナはミラサの背中に向かって言った。
「ミラサ、引っ張らなくても自分で歩けるわよ」
「そうですね。しかしまた何処に逃げられてはこちらも困るので」
「そうね…」
ソラナはミラサにそう返事をしながら、にこやかにこちら見て手を振っている憎たらしい男(シラン)を見ながら、心に決めた。あとで絶対仕返ししてやるわと…
侍女であるミラサに連れられて話し合いが行われている部屋に着くとソラナはゆっくりと扉を開けて中に入った。
部屋の中へ入ると皆ソラナを見たが、ソラナが席に着くとまた話し合いが再開された。
この時、彼女はまだ知らなかった。城の外がどんなに美しくて、儚いものだということを…
暁の空の下で @rearAlice
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