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そのご婦人にキャップを被った人が近づいてくるのが見えた。服装からしてご婦人と同世代。顔を合わせた時に見せた笑みで知り合いだったんだと気づいた。
なんだ、友達がいるなら大丈夫か。
なんて見ず知らずの人を勝手に心配しては安心する。良かった良かった。
と、撫で下ろした胸にドキン、と一つ高鳴りが生まれた。いやいや、何をドキドキしているんだ俺は、その可能性だってあったろうに。
ガラスの向こうの二人が手を取り合っていたからだ。
そうか二人は夫婦だったのか。
公園内には二人以外の人影はなく、きっとこちらにも気づいていないのだろう。何を話しているのかは分からないが、顔を見合わせて笑う姿は年齢を感じさせない。とてもフレッシュで若々しい。きっと二人だけの楽しい話をしているのだろう。手を繋ぎ合って。
「いいなぁ」
つい言葉が零れてしまう。
長年一緒に居ると夫婦愛は薄れてしまう、なんて言葉を聞くけれどきっとそれは全ての夫婦に当てはまることではないと思う。
恋が愛に変わることはある。誰かを思う恋しい気持ちが、例えば最愛や愛情に変わることが。愛は恋の進化系であるという考え方は良く分かる。でも恋と愛の違いってきっとそう簡単なものじゃない。
恋はきっともっと自由でキラキラしているはずだ。例えば目を合わせるだけで気持ちが明るくなるような。
そしてそれは愛に塗り替えられることはない。目の前の二人は今も恋をしているはずだから。
「あんな夫婦になれたら」
そうなれたらきっと、毎日が楽しいに違いないだろうから。
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