ヒポクリシー
薬物関連のニュースが流れるたび、世間やSNSで意見している人間に違和感を感じてきた。
この違和感というものがやっと明確な輪郭を持ち始めたので書き留める。
まず、薬物で捕まった芸能人(薬物使用者全員に言えることだが叩かれやすい芸能人について書くことにする)には使用に至った経緯や精神状態などを見てケアを優先すべきだ。これは僕の意見ではなく、事実である。
カメラの前で謝罪させるのに何の意味があるだろうか。
結局のところ薬物関連のニュースで祭騒ぐ視聴者が欲しているのは「薬物乱用の抑止」などでは断じてなく、そんなものは取り繕った建前に過ぎない。彼等が真に欲しているものは善人面して容赦なく叩きのめせる相手、エンターテインメントなのだ。
皆で一丸となって「極悪人」を追いやるのはとても気持ちの良いことで自己価値というものを錯覚させる。
・芸能人が捕まる。
・一般人が「薬中」やら「そういう人間だったんだ」やら「はやく謝罪しろ」やら喚きだす。
・芸能人がフラッシュの雨の中、陳謝する。
この今や恒例行事と化し洗練された一連の行いは健全とは言い難く、この愚行に加担する人間の本質はマジョリティの皮を被りヒポクリシーという三叉槍を握りしめる悪魔なのだ。
こういった穢らしい人間がやれ正義やら生き方やらを説いているのを見ていると滑稽を通り越して憤りさえ感じる。
かと言って僕が聖人君子なのかと問われると全くもってそうではなく、誰しもが正義を盾に他人を傷つけ、自尊心を保つのである。これは人間の性であり、この憤りはある意味での同族嫌悪であると言える。
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