フラッシュバックする匂い

化粧品だ。

バイト先からあの日の思い出が鼻腔をくすぐった。

帰り道。いつもの居酒屋でハイボールを頂いた時、正体に気づいた。

化粧品だ。ファンデ。

安物なのかブランド物なのか僕にはわからない。

しかし粉っぽい匂いに包まれて眠った記憶が僕の胸の奥底を引っ掻いて外に出ようとした為、電子タバコで我慢していたのを紙タバコに戻し火をつけてしまった。

タバコの臭いでこびりついた安い女の臭いをかき消した。

決して戻りたい訳じゃあない。

愛し合いたいだけじゃあない。

ただ思い出した。

それだけ。

それが僕の我儘なのだろう。

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