タバコ、男

@11245

第1話

人気のない住宅街、そこに1人で歩く人影がある。

目的というのは一箱のタバコであり、近くのコンビニへ向かっている途中だった。

日々習慣となっているタバコが切れたのは、ついさっき風呂から出たところ、小さな戸棚へ置いた潰れている箱に手を入れた所なんとも虚しい空間を切った。

箱を振ってみるとそれは何の音もせず、そこには暗い空間しか残っていない。

少し口を曲げて舌を打ち、予め用意していた軽めの服に着替えすぐさま玄関へ向かう。

玄関に設置されている靴箱の上に小さな引き出し式の箱から家の鍵を取り出し即座に家を出て鍵を閉める。

前から小銭はポケットにしまう習慣があり、そこにある程度のお金を確認するとコンビニへ向かう道を進む。

軽快にコンビニの扉が開くと、すかさず店員の声がやってきた。

そのまま店員のそばへやってくると小さく口ごもるように言う。

「六番」

「はい?」

あまりにも小さい声だったようで、店員は笑顔のまま固まった。

「…六番」

今度は流れている音楽の間に入ったナレーションによって遮られた。

苛立つ感情を隠しながら再度タバコの番号を口にするが、うまく伝わらず徐々に体の底から湧いてくる感情が大きくなってくる。

「だから、六番だって言ってるだろ」

ついにその感情が爆発し声を荒げてしまった。

凍りついた店員の顔を見てしまったと思ったが、もう遅かった。

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