第29話 名前は

 一頻(ひとしき)り笑うと、

「お前の考えた、異世界で事故死した者の魂をこの世界で疑似的に転生させ、本来生きるはずだった寿命の生命力を魔動人の魔力源として使う発想は目を見張るものがある…。」

 原理を説明した意図を感じ、

「今度はお褒めではなさそうですな。」

と。

「茶化すな。真面目な話だ。」

「これは、失礼。」

 謝ったが、その目は笑っていた。

「でだ!」

 強く話を戻した。

「あの一連の小芝居は本当に必要なのか?」

「疑似とはいえ転生者…。人としての人格もありまする。」

「それは、判る…。」

「魔力は人の感情とは切っても切れない関係が…。」

「えぇい、みなまで言うな!」

 声を上げず笑う技術責任者。

「忌々しい奴め!」

「お褒めいただき…。」

「褒めておらぬ!」

 今度は声を上げ笑う。そして王子も釣られる。

 

 笑っている間に考えたのか、

「今度は、第二王子に小芝居をやらせるというのはどうだ?」

「それは良きアイデアですな。」

「そうだろう。」

 得意気に言う。

「では、新型魔動人を第二王子に譲るでよろしいのですな…。」

「こいつめ!」

「今日一の褒め言葉、至極恐悦にございまする。」

「あぁ! 次も私がやる! 帰ったら直に準備にかかれ!」

「御意!」

 その声は非常に愉しげだった。



 薄れていた意識が、その声を拾う。

(王子の声?)

 確かめようと目を開けようとするが瞼(まぶた)が反応しない。

(あれ…。あぁ、さっきの戦いで疲れてるんだな…。)

 自分に言い聞かせ、

(そうだ! 僕の戦いぶりはどうだったかのかな? 自分では上手く戦えたけど…。)

 再度試みるが、やっぱり目は開かない。

 頭の中に靄(もや)がかかり始める。

(思い出した…。戦っている最中に、思い付いたんだ…。)

 意識が靄(もや)の中に沈み始めた…。

(この新型魔動人の名前は。そう…。)


 そして、白い闇が全てを覆い尽くした。




 僕は二度目の死を迎えた…。

 

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