第27話 報告

 どこかで呼ぶ声がする。微睡(まどろ)みの中からから自分の意識を引き上げる声だ。

「…。」

 まただ。

「…子。」

 更に、

「王子。」

 今度は、はっきりと。

「何だ。」

 覚醒しようやく返事となった。

「お休みのところ失礼します。技術責任者が調査報告をしたいと言うことなので機体の所へ。」

 いつの間にか寝ていた様だ。

「判った。」


 テントを出ると辺りを夜が支配していた。陣のあちらこちらに篝火(かがりび)が焚かれ明るくしていた。

(こんなに寝ていたのか…。)

 正直驚いた。

(起こされなれば、まだ寝ていただろう。)


 陣の中で一番明るい場所に新型魔動人が擱座(かくざ)していた。篝火でさえも金色と判る美しさは変わらない。


 近付いた王子に気が付いた技術責任者は、

「作業はそのまま進めろ。」

と、技術者達に指示を出し、

「王子。お休みのところ申し訳ない。」

 一礼。

「構わん。」

とだけ。

「では、調査報告を。」

「うむ。」

「先ずは、キャノピーの開閉が出来なかった事についてですが…。」

 王子の視線がコックピット付近に注がれた。

「機体が全身歪んでおりました。」

「はぁ?」

 王子らしくない、素っ頓狂な声がするが出た。

「う、うん。」

 咳払いで誤魔化す。

「あの大砲の反動で、機体の骨格が歪み装甲が歪み、キャノピーに干渉していました。」

「なるほど…。」

「更に、歪みは回路をショートさせ機能停止へと…。」

「は、は…。」

 もう笑うしかない返事。

「それと…。」

「まだ、あるのか!?」

 今度は、怒り。

「はあ…。」

 すまなそうに、

「機体の魔力が無くなっておりました。」

「魔力が無くなっているだと!?」

「はい…。」

「では…。」

 みなまで言うまでもなく悟った王子。

「直ぐに、後部ハッチを開けろ。」

 怒鳴る様に言った。

「只今、作業中でして…。一番歪みが酷く…。」

「そ、そうか…。」

 冷静さを取りも出していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る