第33話

しばらく道を進んでいくと海と反対側の崖に長い石の階段が伸びていた。


そこには古い石の柱が立っていて、風化が進んでいるせいでよく読めないが"なんとか神社"と彫られている。


もしやと思い俺は階段を駆け上がった。

階段には"シダ"の葉が行く手を阻むように紛雑し、俺の脛に繰り返し小さな鞭打を浴びせる。


やっとの思いで階段を登りきると、目の前に現れた小さな社の下に白い人影を見つけた。


おい…ホントに居たよ…


自分でも驚きを隠せないまま、弾けそうな心臓を落ち着かせて海美の元へ歩み寄る。


「海美っ。」


その言葉に海美が"ハッ"と顔を上げた。


『瀧山くん、何で?…どうしてわかったの??』


「それは…あっ、このペンダントが導いてくれたんだよ…なんちゃって。」


今のちょっとカッコわりぃかも。


『ふふ♪そうかもね。』


えっ?


海美は足元を見つめながらブラウスの裾を指でくるくると触っている。


「いやっ、冗談だけど…てかさっきはごめん。急に帰っちゃって。」


『ううん。私、なんかしちゃったかな…』


海美は俯いたままブラウスの裾をギュッと握った。


「いや、なんにも。あれは…その…」


なんて言えばいいんだろう。

その間も俯いた俺の頭の上の方に海美の視線を感じる。


「突然腹痛くなっちゃってさ。ごめん。」


俺が思いつく言い訳…こんなもんだ。


『なぁーんだ♪もう大丈夫なの?』


意外にもあっさりと俺の"嘘"を信じた海美に罪悪感が残る。


「う、うん。ありがと。それにしても…なんでこんなとこに居るんだよ。」


すると海美は立ち上がり社に向かって二例すると手を2回叩き深々と頭を下げた。


『どうっ?』


「え、どうって…」


自慢気にブラウスの裾を両手で軽く摘み上げ、少し腰を落として"お披露目ポーズ"をする海美は…可愛かった。

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