第3話
見慣れた風景が次々と車窓に流れていく。
小さい頃よく行った商店街、どこに居ても見えたタワーマンション、アイスクリームが美味しかった喫茶店に、俺の学校…
そのどれもが通り過ぎる度どこか別の世界へ消えていってしまう気がした。
いつのまにか"母さんのバックミュージック"は消え、代わりに軽快なリズムと愉快なおじさんの喋る声がスピーカーから流れている。
そして次第に"知っている景色"は減っていき、見慣れない景色だけの"知らない世界"に変わってしまった。
「ここドコ?」
少し風景が変わる度、運転席と助手席の間から顔を出して尋ねる。
しかし返ってくる地名を聞いても、この町から出た事のない俺が知る由もない。
そんな事を何度か繰り返すうちに、俺は車の揺りかごに眠りについていた。
車のバック音で目を覚まし周囲を見渡すと、白い天井のある空間に何台もの車が停まっている。
「トンネル?」
そう尋ねると思いもよらない答えが返ってくる。
『フェリーの上だよ。これから海を渡るからな。』
海を渡る?!そんなの聞いてない!!
「えっ?!外国行くの?!そんなのやだよ俺!!」
『馬鹿!パスポートも持ってないのに行ける訳ないでしょ!!』
「えっ?そうなの?じゃぁドコ行くの?」
『沖洲島よ。あれ?アンタに言ってなかった??』
「えぇ?!島?!聞いてねーよ!!」
島と聞いて思い浮かぶのは石積みの家に見渡す限りのサトウキビ畑、それに日焼けした昔の格好をしたお婆ちゃん…それと、シーサー?
とにかく何にもない退屈なトコロってのは確かだ。
「マジかよぉー…俺まだ若いのに…」
『何言ってんのよ。沖洲島は自然がいっぱい残ってていいわよー♪魚も美味しいし都会と違ってご近所さんもいい人よ♪きっと。』
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