ガラス玉
こうの かける
第2話 白髪の少女
夢の中で、男は呆然としていた。確かに地面はあるはずなのだが、真っ暗でなにも見えない。どこを見ても、遥かな暗闇が続くばかりだった。
自分が立っているのか横になっているのかもわからない中、この闇に反抗するかのように輝く白い髪の少女が、立っていた。男は、自分がどんな状況であるかすらわからないのに、その少女が立っていることだけは、はっきりとわかった。
少女が近づいてくる。
「これをあなたに託します。決して曇らせないで」
少女は男に訴えるように言った。気がつくと、自然と男の右手が開いている。白髪の少女は、透明なガラス玉を男の手のひらに乗せた。
男は喋ろうとした。しかし、声が出ない。ここはどこなのか、少女は何者なのか、そして、この玉はなんなのか。
謎が解ける前に、男の目が覚めてしまった。背中には沢山の汗をかいている。
夢であったはずなのに、男の右手には、丸く、硬い何かを握る感触がある。やはり、ガラス玉だった。
「ツイてねーなぁ」
男は、本日3度目のため息をついた。
窓の外は、台風が過ぎ去った後の綺麗な夕焼けが、東京という街を、淡く照らしていた。
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