01
「きもいよね」
「何が」
「殺したんだって」
智ちゃんの食べるアイスは、完全に私といつも逆のチョイスだった。私は棒アイスなんて手が汚れるから嫌いで、好きな味でも食べたくなるのは夏だから嫌いで、ワガママに私を無視して手を汚しにかかってくる、そんな存在だから嫌いだった。けど、
智ちゃんほどでは無い。
テレビのニュースで、子供を殺して遊んだのがバレたババアとジジイが落ち込んでた。
「理解できないわ…見た目もさ」
金髪の肩出しババアと、金髪ピチピチTシャツジジイ。
きれいなコントラスト。
「てか私さ、だからギャルとか苦手なのかもしんない」
智ちゃんの口とアイスが透明の糸でつながった。
「なんか汚い感じすんじゃん」
多分誰にも見つからないサイズ感の鼻の下に生えたウブ毛を、集中して見つめながら智ちゃんが嫌いになった。
「智ちゃんのこと、ギャルだと思ってる人いるかもよ」
「いねえよ」
「あ、こぼれた」
私の家の前だよ。
一人で渋谷に行った時に、道端で寝てたお姉さんが、私にむかって吐いたから。近くのコンビニでスポーツドリンクを買って(げろまみれで)置いといてあげた。そしたら急に「ねえ」と話しかけてきた。
とてつもなくこの女と話す時間が無駄に思えた。と同時に私の服にこびりついた異臭を頼りに「服が、見て」って言ったら、この女は脱ぎだして上半身下着一枚で私に抱きついてきた。
「しょうがないなあ。見られたら恥ずかしいから早く着て。しょうがないなあ。今日誕生日?しょうがないなあ。」
と、私に自分の服を差し出しながら、つべこべ言った。でも明らかにそんな服は要らないし、なんせお姉さんは三十間近のギャルで私は二十前半の控えめだし。センスはこの世の終わりみたいだったし。「いらない」って言って着せてあげたけどお姉さんは私に抱きついたもんだからゲロまみれだしため息が出た。
「もういいや」
って言ったら、お姉さん立ち上がって「ちょっときて」って言って
路地裏でほぼ全裸になった。
「あげるって」
酔っ払いはこれだから好きだ。私はお姉さんに服を投げつけて
「恥ずかしい」って言ったら
お姉さんはガッツポーズして「幸せ」って言った。
「ありがとう」だって。こうゆう話ジブリでやんないかな。
ニュースに出てたのはその人だって、智ちゃんには内緒にしてた。
智ちゃんは色白で、髪が長くてサラサラで、小顔で可愛くてつまんなかった。けど可愛いから別にいい。
「きいは今好きな人いるの」
ニュースにも飽きて智ちゃんが私を見た。
「いっぱいいるよ」
「いやまーた意味わかんないこと」
どうでもよくね?あんたも好きだよ。
きいって、ドアが開く音みたいのは私の名前。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます