世の中は、大抵がミステリィ

野島製粉

第1話 小説には使えないトリック はじめに

 世の推理小説、ミステリィには様々なトリックが登場する。

 密室だとか意外な犯人など、本当にバリエーション豊かで、私などはあっさりと騙されてしまうことが多い。


 小説のトリックの中には、現実的でないと言われているものがある。

 例えば、交通機関を巧みに利用してアリバイを作る時刻表トリックなどは、事故による遅延の可能性を考慮すると犯罪に使うにはリスクが高いだろう。また、派手な密室トリックにしても、話としてはわからないでもないが物理的には不可能では?と感じるものも存在する。


 しかしながら、トリックが実現不可能だから駄目かというと、そうではないと私は思う。

 あくまでフィクションの世界だから、その小説の世界観の中できちんと成立していれば問題ないだろうと思っている。そもそも名探偵が登場する作品などでは、何の捜査権もないはずの探偵が、警察をさしおいて活躍するが、そういった設定に異を唱える人は少ない。大抵の場合は、一種のお約束として受け入れているはずだ。

 それを考えれば、物語の一部分であるトリックにリアリティがないからといって、面白さを否定してしまうのはあまりにもったいないと感じる。ただ、これがどこまで許容できるか、楽しめるかというのは人によって大きく異なると思う。かくいう私にしても「このトリックはきついな」とか「あまりにご都合主義では?」と感じることもある。


 さて、前置きが長くなったが、小説の世界では作家の先生方が考え出した数多くのトリックが存在する。

 それに対して、現実の世界でも「事実は小説より奇なり」という言葉があるように、不思議あるいは不可解な出来事が実際に起こることがある。ただ、奇ではあっても小説のような面白さは保証されない。むしろ、実際に起こったことでありながらミステリィのオチに使うと「アンフェア」だとか「読者馬鹿にしている」と言われかねない物すらあるのが現実だ。

 次回からは、そんな話を紹介していきたいと思う。

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