2ページ

「今回はこの辺じゃなかったですよね?」

 その野外の会場って確か遠かったはず。

「まぁ確かに遠いっちゃ遠いんですけど、ハルの部屋があるから」

「あぁ、ハルさんのお部屋が」

「こういう時くらい使わないと。ハルだって私の部屋をホテル代わりに使ったりするから」

 そう言って、ふふふ、と楽しそうに笑う。ハルさんはアキさんの双子の妹で二卵性だからあまり顔は似ていないけれど、背丈や雰囲気はそっくりで二人ともとても笑顔が可愛らしい。就職で離れ離れになった二人だけど、趣味の為に飛び回っているから意外と一緒になることは多いのかも。

「んー、まぁタイミングが合えば、みたいな? 三週間ずっと週末に顔を合わせたりする時もあるし、むしろ二人ともがお互いの部屋で寝泊まりしたりする時もありますから」

「おや、そんなことが」

「ありますよぉ、特に趣味がお互いアレですから。同じ時期に同じ地域で、と言う方が稀です」

 アキさんはとあるバンドマンを追っかけていて、ハルさんはとある舞台俳優を追っかけている。同じように舞台上で輝く推しを応援していることには変わりないけれど、それとこれは全然違うんだそう。何度か二人一緒に来店されたことがあるけれど、その時に力説されたもの。

「お互い、大切なものに時間とお金を掛けているってことは同じなので分かり合えることも多いんですけれどね」

「アキさんは二.五次元の舞台、ご覧にならないんですか?」

 話しているうちに興味が湧いてくることだってあるんじゃないの?

「ないですね」

「ないですか」

 そんなにあっさりと。

「だって自分の推しのことしか目に入らないですもん」

 なんてモヒートみたいにさっぱりと言ってのける。なるほど、やっぱり双子だね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る