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「今回はこの辺じゃなかったですよね?」

 その野外の会場って確か遠かったはず。

「まぁ確かに遠いっちゃ遠いんですけど、ハルの部屋があるから」

「あぁ、ハルさんのお部屋が」

「こういう時くらい使わないと。ハルだって私の部屋をホテル代わりに使ったりするから」

 そう言って、ふふふ、と楽しそうに笑う。ハルさんはアキさんの双子の妹で二卵性だからあまり顔は似ていないけれど、背丈や雰囲気はそっくりで二人ともとても笑顔が可愛らしい。就職で離れ離れになった二人だけど、趣味の為に飛び回っているから意外と一緒になることは多いのかも。

「んー、まぁタイミングが合えば、みたいな? 三週間ずっと週末に顔を合わせたりする時もあるし、むしろ二人ともがお互いの部屋で寝泊まりしたりする時もありますから」

「おや、そんなことが」

「ありますよぉ、特に趣味がお互いアレですから。同じ時期に同じ地域で、と言う方が稀です」

 アキさんはとあるバンドマンを追っかけていて、ハルさんはとある舞台俳優を追っかけている。同じように舞台上で輝く推しを応援していることには変わりないけれど、それとこれは全然違うんだそう。何度か二人一緒に来店されたことがあるけれど、その時に力説されたもの。

「お互い、大切なものに時間とお金を掛けているってことは同じなので分かり合えることも多いんですけれどね」

「アキさんは二.五次元の舞台、ご覧にならないんですか?」

 話しているうちに興味が湧いてくることだってあるんじゃないの?

「ないですね」

「ないですか」

 そんなにあっさりと。

「だって自分の推しのことしか目に入らないですもん」

 なんてモヒートみたいにさっぱりと言ってのける。なるほど、やっぱり双子だね。

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