挿話 アレクセレイ-微笑み-

物心ついたときには、当たり前のように人外の生き物と話すことが出来た。




けれど人と違うということはそれだけで、蔑まれたり、恐れられたり、異質と嫌悪される要因になる。




僕、アレクセレイ・椿・クラルテも例外ではない。




クラルテ国の第二王子という肩書きがなければ、ひどい扱われ方をしていたかもしれないと思うほどに。


城の人々から腫れ物のように扱われていた。




そんなある日、僕は聞いてしまった。


「第二王子は異常だ」


「聖域の生き物の言葉がわかるなんて、何かの呪いかも」


「化け物って可能性もあるぞ」


冗談半分に笑いながら話す使用人たち。




傷付いて泣き寝入りなどするような性格でなかった僕はぎりっと歯を食い縛る。




だったら、功績をあげて認めさせてやる!


僕は呪われて居ないし、化け物じゃないってことを証明して、思い知らせてやる!






そして父に掛け合い参加したのは以前から国の中で問題になっていた、聖域の生き物を狙う密猟者を捕まえる計画だった。




そこで、僕は彼女に出会えた。




「すごい!こんな可愛い子達と話ができるなんて羨ましいです!」


「素敵な才能ですわ、コドモドラゴンと話ができるなんて」




目をキラキラさせながらそういう彼女を変だと思った。


普通なら、もっと距離を取られるのに。他の人は腫れ物のように扱うのに。


城の人たちは…怖がって、嫌うのに。






この人は…変な人だ。でも、とても面白い人だ。






たったそれだけの短い会話。けれど僕の興味を引くには充分だった。




その後に見た、月の光に照らされた彼女の姿は、人ならざる物のようでとても綺麗で。




手にいれたいと、思ってしまった。




……ライバルが多すぎるのが難点だけど、その方が意外と燃えるものなのかもしれない


さて、これからどうやって彼女を手に入れよう?




にやつきそうになる口許を押さえながら、今日も微笑みを張り付ける。




誰よりも手中に納めたい彼女に、警戒されては困るのだから。




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