第27話 束の間の休息

  要塞前に現れたヴィルムや敵モンスターを一掃したのを確認した後、

 俺達は一旦屋敷にテレポートで戻ることにした。

  十万弱の大所帯だ。とにかく居場所がない。

  

  それに要塞内にただでさえ少ない部屋を用意して貰うのは気が引ける。

 総指揮のゲルハルト殿下やアンネローゼ殿下には許可は取ってある。


  専用の鎧立てに脱いだ防具を立てかける。

 立像のように防具を立てかけられるものと、防具をパーツ毎に引っ

 かけて装着しやすくしたものと二種類用意してある。


  飾るときは前者、普段は後者の鎧立てを使用している。

 しばしの休息後、また要塞へ出向く必要があるので今日は後者だ。


  比較的長期間出かける用事がない場合は立像のように飾れるタイプ

 を使用するが、基本こちらは使わない。


  とにかくあれだけの敵の対処した後だ。

 疲れて本当はその場に脱ぎ捨てておきたいくらいだが、

 俺専用に用意して貰った鎧だけに乱雑に扱うことは気が引けた。


  要塞内に人が入りきらないので、要塞から少し離れた平地はテント

 だらけになっていた。

  行軍に参加し、長い間テント暮らしを体験したが、

 もういい加減普通のベッドに眠りたい。


  魔王城への突入作戦は単純明確だ。

  最初は軍が魔王城周辺の敵を蹴散らし、突入部隊が侵攻する。

 突入部隊がある程度入り込んだ後、テレポートで城内に精鋭を送る。


  最後の仕上げとして、俺達がテレポートで謁見の間近くへ飛び込む。

 そして、魔王オヴェリスと対峙すると言う算段だ。


  この作戦にローラン王国の全ての命運が掛かっている。


  大量の投石機や投射器も本隊と共に運びこまれ、てんやわんやだ。

 突入前に設置し使うのだという。


  それに加えて王国随一の宮廷魔術師軍団も随行している。

 アークメイジレベル99の強者が数十人。最悪、城ごと彼らの詠唱する

 メテオ=エクスプロージョンで破壊する事もありうるとのこと。


  当然、魔王はその程度では死なないが。

 可能な限り、城は確保しておきたいのだそうだ。

 

  長い行軍の疲れを癒やし、体の汚れを落とすために大浴場へひとり、

 やってきて居たのだが……。


  まだ、アストリアや井岡はいい。

 実際問題、少女井岡が入ってることには問題がないわけではないが。


  なぜか、ロザリアやセリスティアも一緒だ。


「お嬢さん方、男性に裸身を晒して恥ずかしくないのかい?」

「ふぃ~~。やっぱりお風呂は生き返るっす~」

「井岡はともかく」


「もう、くたくたなのよ……貴方達が出てくるのを待っていたら、寝て

 しまいそう」

「もう、何度も見られてるので今更ですぅ」


  違うな。俺の気を引く為に、わざとやっているのだ。

 ロザリアとはちょくちょく会っていた。二年前と比べて、体つきが少

 女のそれから段々成人女性の肉体へと変化しつつある。


  やや筋肉質ではあるが、細かった体はかっちりして、胸やお尻も

 しっかりと脂肪を蓄え丸みを帯びている。


  本人は太ったことを否定してはいるものの。


  それはセリスティアにしても同様で、身長も少し伸びて、服の上から

 もしっかり凸凹がわかる程度にはふっくらしてきた。  


  簡単に言うとむちむちしてはち切れんばかりである。

 元々女性としては長身だったロザリアの身長はあまり伸びてはいない。


  アストリアはと言うと、もはやどうでもいいというか……完全に、

 諦めていた。言い出したら聞かないのだ、ロザリアは。


  変に隠したり、照れたりするのでエロさが1割増しくらいになる。


「二人とも、長い間本当に頑張ったな」

「うん、本当は……何度もへこたれそうになったわ……」


  気丈なロザリアでさえこうなのだ。


「そう言えば、少し気になったのですが、どうしてまた本隊と一緒に

 行軍してきたのですか? 悟さん達ならテレポートで一発ですよね?」

「あ――――それはっすね、エンドレス戦闘に参加したくなかったのと、

 ヒーローみたいに登場したかったからっすね」


  そうなのだ。例え先に着いたところで魔王軍が延々とモンスターを

 送り込んでくることは明白だった。

  だから本隊と一緒に移動していたわけだ。

  これが、到着しないことには戦闘がいつまでも続くことになるからな。


「なるほど……確かに、悟さん達がむやみやたらに消耗戦に参加する

 必要性は感じませんね」

「魔王討伐の大本命が討伐前に死んでたら洒落にならん」


「ロザリアもアストリアも本当に良く踏ん張ってくれた」

「自分はこれくらいしか、できませんから」


「でも多数の死者が出たわ……。数え切れないくらい多くの」

「彼らの死に報いる為にも、絶対に魔王は倒さないとな」

「ええ、せっかくローラン王国始祖のお二人が、自分に力を託してくれた

 のです。それに応えねば」


  部長はセシリア邸の近くにある自宅へ帰っている。

 留守中はさゆりさんや、マリカちゃん、ミックと使用人達に邸宅の管

 理を委ねている。

  

「なぁ、アストリアは女性に興味はないのか?」

「何ですか? 唐突に」

「お前もそろそろ、身を固めた方がいいんじゃないのか?」


「……両親にはよく言われますが、今はそんな気にはなれません」

「どうしてまた?」

「こんな時期だからです」


「ふむ。まぁ……そうなんだけど、お前もてるだろ? だから女性の影

 が全く見えないのが不自然だなと」

「もてるのも正直困りものですよ。家名や容姿目当ての女性ばかり

 言い寄ってきますしね。それに、男性にも言い寄られたことが……」


「うんざりしているという事か……」

「有り体に言えばそう言うことですよ……」


「好きなタイプとかはいないの?」

「うーん。別に彼女が好きだとかそういう訳ではないのですが、

 タイプ的にはリザリー嬢のような控えめな女性が好みですね。

 彼女は出過ぎず、女性としての気遣いがしっかりできてますし」


  確かに……。今いる面子は超個性的だからなぁ……。

 リザリーか……。無事だといいのだが……。

 焦ってもしょうがないのは分かっているんだが。


「今、彼女……何をしているんでしょうね……」

「ミレイアは捕らわれていると言っていたけどな、俺をおびき寄せる為に」

「酷いことされてなければいいのだけれど」

「想像はしたくないが……」


「リザリーなら、丁重に扱われているので大丈夫よ」


  いきなり脱衣所側から声が聞こえてきたのでそちらへ視線を向けると

 豊満な裸体を晒したミレイアの姿があった。

  完成された大人の体。大きな胸と前からでも分かる大きなお尻。

 引き締まったくびれ。


「ふふ、あんまり見つめられると恥ずかしいわ……」


  なんだろう、どこから突っ込んでいいのか分からない!


「丁度、あなた方に伝えておきたい事があってここに参りました」


  そう言って、体を洗い流した後、俺の目の前に彼女は座る。

 おっぱいがぷるんぷるん揺れているのが分かる。

  半身が浸かっていないので丸見えになっていて、ついつい

 視線がそちら側に吸い寄せられる。


  息子の膨張率がやばい! おっきしちゃう! 

 ぜってーわざとだ! ミレイアは正直何を考えているのか分からない。

 

「先ほど、言ったようにリザリーは無事です。

 マクスウェル伯爵に捕らわれています。彼はリザリー元王女の支援者

 でしたが……。魔王側に寝返ったようです」

「リザリーが元王女……」


  どこか品がある女の子だと思っていたが……。

 亡国の王女様だったのか。


「今は亡き、イスカンダル王国を再興し、その国王に収まろうと目論んで

 います。彼女は魔法の拘束具を付けられ、部屋に軟禁状態です」

「そのマクスウェル伯爵と言うのは、つまりはリザリーを娶りたい」


「ええ、なかなか首を縦に振らないので困っているようね。そこで、

 あなたを倒し、力を見せつけることで彼女を屈服させたいのでしょう」


  とりあえず、リザリーは肉体的虐待を受けていないようで安心した。

 しかし、俺が来るのをずっと待ち続けている。

 待たせ続ける事に罪悪感を感じずにはいられないな。


「その前に、オヴェリスの事をお話ししましょうか……」

「俺達は色々、文献やら調べてみたんだがかつて実在した王の名前が、

 オヴェリスだったが……何か関係があるのか?」


「ええ、そのオヴェリス自身が彼なのです」

「オヴェリス王の資料が全然みつからなくて詳細が分からないんだ」


「千年以上前に存在した、オヴェリス王朝の最後の王。

 その名はアレクサンダー=オヴェリス。またの名を『残虐王オヴェリス』」

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