インジゴカルミン

 ペガサスは前肢、翼、後肢と、足が六本あるから昆虫の一種なのではないか、という冗句を聞いたことがある。

 昆虫なら翅が四枚あるだろう、ということで、その話題は終わった。


 人間が百万分の一のサイズになったら、鳥肌が可視光線の波長ほどになって、妙にキラキラした小人になったりするのだろうか。


 雨の日は町中が灰色になる。


 八本足の馬は、タラバガニのような味がするのだろうか。


 雨の日に蛍光灯を全力で焚いたら、町は何色になるのだろう。


「お見送り、ありがとう」

「どういたしまして」


 彼女が自宅マンションのオートロック・ドアを抜けた所まで確認して、僕は踵を返した。


 靴が湿って気分が悪い。


 風が吹き、雲が切れて、白い光が差し込む。

 灰色は消えて、夏の緑が広がった。


「カアーッ、カアッ」


 と、カラスの鳴き声が響く。

 電線の方を見上げると、黄色いオウムがカラスの鳴き真似をしているようだった。

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