もうすぐ夏休み。

KZ

 夏休みの予定

 七月のとある日。

 暑いなと思う時期になってきた。

 冷たい炭酸飲料が飲みたくなる。

 そんな季節になってきた。


 ──もうすぐ夏が来る。


「なあ、夏休みどっかいこうぜ?」


「…………」


 周りがうるさいわけでも、無視されているわけでもない。

 ヘッドホンから漏れる音。単に聞こえていない。


 楽に気づかせたい。


 目の前で手を振る。肩を叩く。大声を出してみる。

 どの選択肢も、寝っ転がったままでいたい、自分としてはやりたくない。

 それに、自室で大声を出すとか、他のやつからも白い目で見られそう。


 なら、これだな!


「──冷たっ! いきなり、なにすんの」


 驚いて足を引いたから、この角度からだと見える。見えてはいけないものが……。


「そんなに驚くとは思わなかった。すまん……」


 ペットボトルを押し付けてみた。


「それで。なに?」


「夏休みどっかいこうぜ。って話」


「暑いからイヤ」


 そう言うんじゃないかとは考えていた。

 夏なら暑いから、冬なら寒いからと言うはずだと。


「遊びにいこうぜ? 一回くらいいいだろ、な?」


「七月中に、課題を全部終わらせたら考えてもいい」


 そんな無茶な。

 休みの最後にしかやらないと知ってるくせに……。


「どうせ、課題が終わらない。助けてくれと言いにくる。一回くらい真面目に取り組むなら検討する」


 未来予知。ではなく毎年のことだからな。


「本当に課題やったら、付き合ってくれんの?」


 遊びに。が抜けていた。

 ──告白したみたいになってしまった!


「告られた……ごめんなさい」


 一瞬で振られた。


「違うからな? 遊びにだからな? 分かってる?」


「分かってる。冗談よ」


 冷たい炭酸飲料の仕返しだろうか……。

 まあいい! それよりも!


「海いこうぜ! 俺に選択権があるだろ?」


「日に焼けるからイヤ」


「じゃあプール」


「……下心が透けて見える」


 どうしろと? 直接的に水着が見たいとでも言えばいいのか?


「山ならいい。涼しいところ」


「──川という選択肢もあった!」


 川遊び。なくはない。


「どう言っても水場に誘導される」


「夏にしか、できないことをしたいだけだよ?」


「不自然な棒読み……仕方ない」


 折れたな。それはつまり……。


「──よっしゃ、海な! 言ったかんな?」

「仕方ないと言っただけ。やっぱり下心しかなかった」


 他のやつらが会話に気づく。

 自分たちも行くつもりのようだ。


 お呼びじゃないことを察してほしい。


 うっかり、付き合ってくれと言ってしまったが、それはこの夏の目標だ。


 チャンスはある。必ず!


 今より距離を近づけたい。今年の夏は。


「どうせなら海かな。波の音は悪くない」

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 もうすぐ夏休み。 KZ @KZ_19890609

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