僕等の最終幸福論

四 いお

議題1.「幸せとは何か」

議題.「幸せとは何か」


それは彼女と僕が今まで会話をした中の4分の3の内容だった。残りの4分の1は本当にくだらないことで、例えば昨日の夜ご飯はハンバーグだったとか、今日の小テストの出来栄えはどうだったとか。

同じクラスにいてもそこまで関わることがなかった僕達がなぜこんな人の真の方まで見えてしまいそうな話をする仲になったのか、

今思えば僕でも謎だらけだ。

思い当たる節があるとするならば、彼女と日直をした日の放課後に日誌を書く彼女を待っていたことくらいだ…


僕の言う彼女、つまり桜間 志乃はよくクラスの中心で笑っているような明るくて友達に囲まれているようなクラスメイトだった。

僕、藤咲 晴はあまり周りの人間に興味がないだけで数人の友達と楽しい高校生活を送っているような人間だった。


「ねぇ、晴。晴にとっての幸せは?」

放課後の教室で2人きりになると彼女は大体こんな質問をする。

「僕の幸せは早く帰って寝ることなんだけど、帰っていい?」

少し嫌味たらしかっただろうか。

いや、そんなことは無いな。彼女のことだ。

笑っているだろう。

「えー、つれないなぁ。もう少しだけ付き合ってよ。私の幸せはね、」

ほら、それどころか自分の話を勝手にし始める始末だ。

「私の幸せはね、早々に死ぬことかなぁ。あ、でもやりたい事を全部やって君より早く死にたい。」

なんて冗談だと言うようにニヤリと笑って僕の反応を待っている。

多少の反抗心を持ち合わせてしまっている僕は彼女の期待をどう裏切るか考える。

「もし僕より早く死んだら御墓参りくらいはしてあげる。」

でも結局、彼女の想像の範囲内だったようでニカッと笑った彼女は「お供え物はスイーツにしてね。」

なんてやはり冗談めかしい答えを返す。


今日はそんなところでお開きになった。

こんな可笑しな事を話し合う、いや、彼女が僕に一方的に話す時は完全に彼女の気まぐれでおしまいのタイミングも彼女の気まぐれだった。

今日は観たいドラマがあるらしい。

男として一応彼女を最寄りのバス停まで送る。

「また明日、君も気をつけて帰るんだよ。」

と手を振りながら大きな声で言う彼女に僕は小さく手を振り返して駅に続く道を歩き出した。


家に帰ってベッドに横になる。

彼女と話すようになってから嫌でも考えてしまう。

「幸せとは、なにか…か。」

今こうして家に帰って横になっていると早く帰りたいが為に彼女に言った薄っぺらな僕の幸せもあながち嘘では無いのかもしれない。

そんな事を思いながら僕はいつのまにか眠りについていたのだった。


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