紅い明かりを灯して

カゲトモ

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「え?」

 つい訊き返してしまった。まさかこの人からそんな言葉が出るとは思わなかったから。

 いや失礼か。容姿がチャラいからって。

「だからぁ、ヴァンパイアって死ぬまで一人の人しか好きにならないのかなって」

「え、どうしたんです?」

 やばい。やっぱり訊き返してしまった。だって今までそんなこと訊いたことなかったじゃないの。

「や、ちょっと不思議に思っただけ」

 少しばつの悪そうな顔で視線を外す。

シオタ君はちょっと見た目がヤンチャって感じだけど根は純粋な子だ。パチンコで勝った時は通うけど、金欠のときは全く顔を出さないって子で、今日はボーナスを軍資金に結構儲かったから来たらしい。現金な子だけど素直だし面白い。

「それってパチンコの話ですか?」

 今はいろんなパチンコが出ているらしいし。俺はやらないから分からないけど、アイドルとかアニメとかいろんなものがあるらしいし。それがリーチの条件、とか?

「違うし」

 違うのか。

 シオタくんはロンググラスを満たしたマリブサーフをちびり、と飲んだ。甘口で弱いカクテルだけど、名前が気に入ったからと頼む姿は可愛らしい。格好つけていてもまだまだ少年らしさが残っている感じ。彼はまだ若いね。年齢だけじゃなく。

「アニメとかじゃなくて現実だし」

「え?」

 ぽつりと零した言葉に間抜けな声を出してしまう。なんだって? たまにズレたことを言う子だけど今日はまた大いにずれている感じがするぞ。

「なんかめっちゃ年上なのにめっちゃ綺麗な人がいて」

 ほうほう。シオタ君の話を聞いてみると、そのヴァンパイアとは倍くらい年齢の違う年上だけど凄い綺麗で美人な人のことらしい。なんでヴァンパイア?

「だってヴァンパイアは歳を取らないでしょ」

「あぁそういうことですか」

 だからヴァンパイアね。なるほど。

「でもそれだけじゃなくて」

 グラスを煽って一度喉を鳴らすと、一瞬考えるような顔をして続けた。

「ちょっと相談したいんだけど」

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