10.俺達は何者?不良?いえその前に学生さん




「池田、潰されたと聞いた。真実?」




 侘しいネオンが点滅している商店街外れ、とある一角にある地下のバーにて。


 時刻は午前様過ぎ。

 翌日を迎えた刻にも関わらず、日賀野大和率いる不良チームは店で飲食、また小さな遊技場で時間を潰している。ここはチームメートの親族が持っている店で今は休業しているため、勝手に使用している。よって補導員の目を気にしなくてよい。

 各々時間を過ごしている最中、小柳 帆奈美ほなみはチームリーダーに疑問をぶつけているところだった。ビリヤードを楽しんでいたリーダーのヤマトは短く肯定の返事を返す。

 「そう」帆奈美は相槌を打ち、支障は出ないのかと更に疑問を重ねる。「ああ」やはりヤマトは短い返事を返すだけ。


 何処となく愉快を含んだ表情に本当に大丈夫なのかと帆奈美は憮然とするが、ヤマトの表情は変わらない。


「今日は谷津田がやられてやがる。その前は井浦のところだ。ああ、そうだ、堀のところもやられたな」


 着実に向こうは自分達と繋がっている不良達を潰しに掛かっているようだ。不利な状況にまでは至っていないが、優勢という地位は崩れつつある。芳しくない状況を嬉々に語るヤマトは実に楽しそうだ。

 どうせ、本気で荒川達とやれると胸を躍らせているのだろう。それだけ向こうが本気を出してきたのだ。ヤマトにとっても血の気の多い男面子にとっても、嬉しいことだろう。自分はあまり興味はないけれど。帆奈美は冷然した眼を彼に投げかける。


 ヤマトはティップ表面にチョークを塗りながら話を続けた。


「単細胞な荒川にしては最近、頭を使った行動が多い。行動が慎重だ。大方、チームの入れ知恵だろうけどな。あいつの最大の弱点は周りが見えなくなるところにある。熱しやすく冷めにくいってヤツだ。怒れば怒れるほど、周りが見えなくなる。仲間に手出しされでもしたら頭が沸いて猪みてぇに突っ込んで来やがる。それが最近目立たなくなったってことは、誰かがあいつをセーブしてやがる」


「あのヨウがセーブ……貴方の気に入っている舎弟のせい?」


「あるいは副頭の相牟田。もしくは三ヶ森辺りだろうな。貫名や荒川の犬は荒川と同じ血の気が多いしな。土倉は頭が切れるが、荒川をセーブするまでの力量はねえ。向こうもメンバーを増やしてるが、荒川をセーブとしてるとなると、今の三人に絞られる。いっちゃんの可能性は例の舎弟だろうがな」


「信じ難い」


「ククッ。そりゃお前が中学時代のあいつしか知らないからだ。気になるか? 荒川のこと」


 意味深な問い掛けに、「冗談」帆奈美は機嫌を損ねた。

 確かに荒川庸一とはセフレ関係ではあったが過去の話。もう相手に想うこともない。それを知っていての問い掛けだったら心外だ。不貞腐れる帆奈美に、「悪かった」ヤマトはシニカルに笑いながら詫びを口にする。完全に自分の反応を楽しんでいる。

 「酷い男」気分が悪くなったと帆奈美は不機嫌に言い、荒々しくカウンターに腰掛ける。


「あーあ、ヤマト。帆奈美がご機嫌ナナメになった。禁句を言ったせいだよぉ?」


 バーの片隅のソファーで様子を見ていた諸星もろぼし 則武のりたけは機嫌を損ねた帆奈美を横目で見やりながら、なんでわざわざ地雷を踏むのかと呆れていた。


「今は自分のセフレじゃん」


 諸星改めホシの言葉に、「苛めたくなっただけだ」ヤマトは上機嫌に答えた……それはそれで酷い理由だ。ホシは心底呆れる他なかった。


「てか、ヤマトさん! いつ向こうに奇襲をかけるんだよ! こうしてヤマトさんが裏で手を回している間、自分達はとっても暇なんだぜ?! 自分バッカズリィーよ! 自分も早く奴等と、特にシズをフルボッコにしたくて仕方が無い! あああっ、奴の眠たそうな顔を見てると血が滾ってくる! 自分の闘志が燃えてくる! なんだ、あのやる気のない顔ッ、腹が立つ!」


 グッと握り拳を作り、熱弁しながらカウンターでビールを引っ掛けていたのは伊庭いば 三朗さぶろう。通称サブ。

 チーム一熱血漢なサブは、自分達の出番がないことに不服を漏らしていた。ほろ酔いだからだろう。若干テンションが高い。いつも以上に熱い。「奇襲をかけたい、喧嘩がしたい!」熱弁するサブに、面倒な男だとホシは呆れ返る。

 気にすることもなく、ヤマトは狙いを定めて玉を突いた。バウンドする玉のいくつかはポケットに入っていく。


「サブ。何度も言わせるな。その内、機会はやる」


「そればっかりじゃんかよぉお、ヤマトさん!」


 そろそろ飽きたとサブ。その熱意は評価に値する。


「相変わらずオアズケが苦手だな。サブ。お楽しみは後だ後」


 間違っても余計な事するんじゃねえぞ。

 ヤマトの鋭い眼光にも臆することなくサブはガックリ項垂れる。「喧嘩してぇなぁ」オアズケなんて切ない。嗚呼、無情。酔っ払いは戯言を零していた。


「そういやアキラはどうした。此処にはいねぇみてぇだが」


 話題を変えるために、ヤマトが仲間の居所を尋ねる。

 返事したのはホシだ。「アキラは遊びに出かけたよ」おおかた、バイクで夜の街を駆け抜けているのだろう。彼は肩を竦めた。


「ちなみにアキラは“あいつ”と一緒ね……近頃元気なくしちゃっていたし。アキラなりに元気づけようとしているんじゃないかな。あいつは悟られぬよう、振る舞っていたけど」


「……ならアキラに任せるか。あいつは誰よりアキラに心を開いている」


 意味深長に吐息をつく。

 こればかりはどんなに悪知恵を働かそうとどうにもならないことだ。仲間はアキラに託すことにしよう。


「それよりさぁ。ヤマト。荒川達とは別に不穏な動きがあるって聞いたんだけど」


 ホシがご自慢の爪を眺めながら、問い掛ける。

 応答者から質問者へ立ち位置が入れ替わり、ヤマトは動きを止めた。


「それに関してもアキラ頼りだ」


 あいつが情報を仕入れている、眉根を寄せるヤマトはそれ以上のことは言わなかった。

 最近、自分達の周りで不穏な動きが見え隠れしている。具体的にどういう動きとは言えないのだが、まるで観察されているような、嫌な動きが垣間見えているのだ。折角本気になった荒川達とどんちゃんできると思っていたというのに、なんだか水を差された気分だとヤマトは思っていた。


「それも大事だけど、ヤマト、このチーム、ある意味危機に直面している。暫くチームの人数が減るのだから。貴方もこちらに顔を出せないんじゃ? 私もそうだし、ススムやサブもそう。個人的な事情が重なった。なあなあにしておくことはできない」


 不機嫌面のまま帆奈美は意見した。まだ機嫌を損ねてるようだ。声がやや低い。


 カンッ、玉を突く音が店内に響き渡る。

 バウンドする玉はどれ一つもポケットには落ちなかった。調子が狂ったと愚痴り、「大半のメンバーは顔を出せなくなるな」ヤマトはとある事情に舌打ち。そして事情により、チームに手が回せなくなる現状に吐息。

 荒々しく頭を掻き、「ゲームもお楽しみも先延ばしだな」事情を解決する方が先だと漏らした。帆奈美の言うとおり、こちらを解決する方が先なのだ。チームで動くばかりの生活ではないのだから。


「ま、向こうも同じ危機に直面してるんじゃねーか。寧ろ、危機に直面してなかったら世界はとっくに終わってる。向こうが奇襲掛けてくるってのはないだろ」


 確かに。

 店内にいた不良達は揃って頷いた。きっと自分達の抱えている問題を、向こうも抱えているに違いない。



 ◇ ◇ ◇




「――分かっていたこととは言えピンチだな、俺等。全滅に近いじゃねえかよ」



 重々しく話を切り出してきたのはチームリーダーのヨウ。 

 「ほんとにな……」頷くシズの口調は重い。珍しく困ったように笑っているワタルさんも参ったと弱音を吐いているし、弥生にいたっては目の前のピンチにダンマリになっていた。今日も今日とて無理やりたむろ場に連行されたタコ沢なんて開き直って腕を組んでる始末だ。

 いつにも増して、たむろ場にしているスーパー付近の倉庫裏の空気が重いのは俺の気のせいじゃないだろう。


 「だ、大丈夫ですよ!」空気を蹴散らすようにモトが明るく言うけれど、空気はどんより重たいまんま。散らそうとした湿気た空気は散ることなく、沈黙に形を変えてしまった。大半が暗い顔をしている一方で、俺、ココロ、ハジメ、響子さん。そして中学生組はアイコンタクトを取っていた。


 うーんと、ピンチっちゃピンチだな。

 何がピンチかって? あ、先に言っておくけど俺はピンチじゃねえよ? ギリギリ、地味友のおかげでギッリギリ免れたんだ。


 何に免れたか? そりゃー……。

 ほら、俺達さ。周囲から不良同士争っているどうたらこうたら言われたり、地味が荒川の舎弟だとかこうとか言われたり、色んなことが言われているんだけど、そんなことを言われる前に俺達学生なんだわ。高校生なんだわ。

 学生ということは当然、定期的にやってくるアレが待っているわけで……。


「はぁーあ。チームの半数以上が追試って……有り得ねぇだろ。このままじゃ留年しちまうぞ、俺等」


 ヨウは大きく溜息をついた。

 そう、俺等のチームは追試というピンチを迎えているんだ。

 話は遡ること一週間前。各々の高校で定期試験があったんだけど、見事にチームメンバーは撃沈した。常日頃からヨウ達とサボっている俺は、母さんに事が知れたら大変だと試験期間に入るや否や地味友に勉強を教えてもらっていた。放課後や昼休みはヨウ達と一緒だから授業の合間だとか、電話で範囲教えてもらったりとか。

 結果、数学と英語は赤点超ギリギリだったけど、寝不足というリスクまで背負って勉強したおかげで他の教科は平均並みだったんだ。


 いやさ、勉強しようと教科書を開いたはいいんだけど、サーッパリ分からなくて。

 このままだとガチで留年しちまう! 本気で危機感を感じた俺は地味友に助けてくれと泣きついたんだ。

 そしたら皆、懇切丁寧に教えてくれた上にノートまで見せてくれた。透なんて俺が泣きつくことを予測していたみたいで、事前にノートをコピーして渡してくれた。どこら辺が出るのかもちゃーんと書いててくれた。その時の感動といったらさぁ! 感涙だぜ感涙!


 勉強を教えてもらっている合間あいまに、俺の中に溜まっていた不良に対する恐怖話や愚痴を地味友はしっかりと聞いてくれた。

 光喜は俺の不運話を聞いて、「でも田山。強くなっているよな」それって凄いことだと心の底から褒めてくれたし、透は「何かあったら僕も協力するよ」本当だよ、圭太くんは僕を助けてくれたんだから。強く言ってくれたし、利二なんて「できる限りの手助けするし情報も提供するから」いつでも頼って来いって言ってくれたし!


 嗚呼、持つべきものは地味友だよな! ありがとう、利二、光喜、透。超絶愛しているぜ!


 と、いうことで、俺はめでたく追試をパスできたんだけど、残念なことに不良の大半は撃沈。泣く泣く追試を受けることになった。


 だけど追試期間中、チームは喧嘩関連のことが何もできなくなる。

 追試もパスできなかったら進路にまで影響が反映される。最悪、留年になるかもしれない。それだけならまだしも、保護者呼び出しは免れないだろう。

 元々ヨウ達は素行が悪い。学年主任クラスの教師と担任と保護者と自分の四人で面談しないといけなくなる可能性もある。不良達にとって耐え難い苦痛だろう。もはや日賀野達どころじゃなくなる。それはとてもとても不味いと、こうして緊急集会を開いている。


 ……まあ、簡単に言えば普段から授業をサボった俺達が悪い。ツケが回ってきたんだ。


 ヨウは現状に唸り声を上げた。

 

「ヤマトチームを潰す前に大問題発生だな。ヤマトどころじゃねえ。まさか、こういった問題が出てくるなんざ……迂闊だった」


「バーカ。勉強してねぇアンタ等が悪いんだろうが。うちは事前に言っておいた筈だぜ? 試験前になったら勉強をしとけ。チームに影響が出るから、しっかり赤点だけは取らないようにしろって。なのにこのザマはなんだ」


 ご尤もである。

 無様な有様に響子さんは苛々しながら喫煙、紫煙を吐き出してじろっとリーダーや仲間達を見据えていた。


 響子さん、不良のくせに意外と勉強はきっちりする人らしい。

 ハジメも身なりのわりには勉強はできる方らしく、俺よりも成績が良かった。高得点の数々には目を削いだよ。なんであんな点数を取れるんだい、不良のくせに。

 ココロは俺と同じように努力して勉強の値を上げたみたいだ。成績こそまちまちだったみたいだけれど、「睡眠時間を削って勉強をして良かった」なにより追試がなくて良かったと胸を撫で下ろしていた。うん、俺も思う。ほんと努力して良かった。んでもってありがとう、地味友。ほんとに助かったよ。


「高校になるとメンドクサイっスね。留年の可能性あるんだから。それに関しちゃ俺っち達、楽だな。モト」


「だなー」

 

 能天気に笑ってるモトとキヨタだけどお前等、今年は受験生だろ? 中三だろ? 勉強は大丈夫なのかよ。来年から苦労するぞ。

 心中で呆れていると、モトが頭を抱えているように声援を送った。弟分として一言送ってやろうと思ったらしい。目をらんらん輝かせ、キャツはこうのたまった。


「留年したらオレと一緒ですね! オレ、来年はヨウさんと同じ高校に行くつもりなんです! ヨウさんと同じ学年とかめちゃ嬉しいですよ!」


「テメェ……こっちが真剣に悩んでいるっつーのに」


 既に留年後の妄想しているようで、モトは熱弁して同じ高校に行くと宣言していた。


 モトはヨウと同じ高校に行くつもりなのか。

 てことは、来年からめっちゃ煩くならね? 想像しただけで寒気だ。ただでさえモトはヨウ信者だ。始終もヨウに纏わり付くのは当たり前だろうし、俺へのお小言も増えるだろう。今も舎弟なんだからちゃんとしろだのなんだの、口酸っぱく言ってくる。お前は俺の母親か!

 ゲンナリと顔を顰めていると、どこからともなく熱い眼を感じた。ヤーな予感がする。横目で犯人を探す。


「俺っちも、ケイさんと同じ学年になりたいなぁ」


 やっぱりお前か。

 勝手に人の留年を妄想してしやがって。

 キラキラキラキラキラ。キラキラキラキラキラ。尊敬の眼を送ってくるキヨタは、「俺っちはどこまでもついていきます」なんぞと告白してくれる。たいへん重たい弟分愛である。お前も、俺等と同じ高校を受験するつもりなんだな。愛想笑いを浮かべ、キヨタの頭に手を置く。


「留年はしないけど、お前が学校に来ることを楽しみにしているよ」


 「はいっス!」大感激だとはしゃぐキヨタは頑張ると俺に笑顔を向ける。その気持ちが空回りしないことを願うよ。


 響子さんがまたひとつ紫煙を吐き出す。

 空気に触れた紫煙が溶け消えてゆく。苦々しい臭いが鼻腔を不快感にさせた。


「とにかく追試をパスしねぇと、チームどころじゃねーだろ。アンタ等、いつから試験だ? うち等の高校は五日後だけど」


 きょろっと眼球を動かして近場にいたハジメに問う。

 他の面子では日程すら把握していないと判断したようだ。


「僕等のところも五日後だよ。つまり五日で勉強をしなきゃならない」


 「でも大丈夫かな」ハジメは不安を口にする。


 だよな、俺も不安だ。

 ヨウ達って極端に勉強を嫌っているみたいだから。教科書開いた途端、寝ちまいそうだ。個別に勉強する奴等じゃないだろうし。

 タコ沢は意外にも一教科だけパスすればいいみたいだけど、残りは四教科も五教科もあるみたいだ。この調子じゃ、本当に留年に向けた四者面談を迎えちまうよ。どうしたものか。まじで日賀野達との交戦どころじゃないぞ。


 すると響子さんが仕方が無いとばかりに案を出した。


「残り五日、追試をパスしたうち等がアンタ等の勉強を見てやる。パスしたのはうち、ハジメ、ケイにココロ。この四人で追試組を面倒みてやる」


 え゛?

 俺等で勉強を教えるの? ヨウ達に?! 俺だってそんなにできた方じゃないのに?!


「ええぇー……響子。ヨウ達に勉強を教えるって、自学自習より難しいことだって」


 ハジメは無理だと意見するけど、「しゃーないだろ」響子さんはヨウ達を親指でさした。


「チームの戦力の大半が追試に回っちまっているんだ。うち等でどうこうできる状況じゃないだろ」


「そりゃそうだけどさ。はぁーあ……ヨウ達に教えるだなんて……骨折るよ。きっと」


 仕方が無しに同意するハジメ。響子さんには逆らえなかったみたいだ。

 俺やココロも響子さんに逆らえる勇気はなく、渋々と承諾した。響子さんに逆らえる人ってそうはいないと思うよ、うん。追試組も留年の危機が迫っているということで異論はなかった。


 早速勉強するべく倉庫裏から、幾分勉強ができるであろう倉庫内に移動する。

 幸いなことに此処の倉庫は常日頃から扉であるシャッターが開かれている。机や椅子はないけれど、中は静かだし、外より幾分マシだ。滅多に人も来ないから好都合だろう。窓辺から日差しも入ってくるから視界も良いし。

 周囲にドラム缶や鉄パイプ、木材といった荷はあるけれど、地べたに座り込んで教科書を開くだけの余裕はあるだろう。


 さあ地べたに座り込んで勉強を開始……したはいいんだけどさ。

 教科書を開いたシズがまず、それを眺めて数秒後におやすみなさいモード。うとうとと居眠りを始めた。早いよお前。まだ教科書を開いただけだろうよ。


 シズを起こそうと足を動かす。

 けれどその前にどこからともなく欠伸が聞こえた。首を捻れば、眠気を誘われたかのように弥生も欠伸を噛み締めながら、「意味分かんない」世界史Aの教科書を近付けたり遠ざけたりしている。胡坐を掻くヨウは俺も眠くなった。頭に入らないと伸びをして、首をパキポキ鳴らした。ワタルさんなんて「留年でいいやー」もう諦めかけている。なんだこの根性なし達。


 タコ沢を見習えよ。

 あいつ、壁に寄り掛かって黙々教科書を眺めているぞ。生物Ⅰだけ赤点だったらしいんだけど、それだけ手をつけていなかったから結果が悲惨なことになったとか。すげーな、タコ沢、意外とやれる男なんだな。勝手に自分で勉強しているんだもんな。


 しかし……ヨウ達のあまりのやる気のなさに教える俺等は絶句。

 どーするよ。このやる気皆無の空気。教える教えないどころじゃない。まずはやる気を出させないと、どーにもなんねぇって。俺の周りにいる不良って喧嘩には燃えるくせに、勉強になった途端、消沈するんだな。



 ガン――!



 突然、倉庫内に木材の蹴り飛ばす音が聞こえた。

 ビクビクッと驚く俺達に対して、響子さんはやる気のない面子にニッコリ。手には錆びかけた鉄パイプ(倉庫に置いてあったものを取ってきたんだろう)。青筋を立てながら、「ざけてるんじゃねえぞ貴様等」荒々しい口調でヨウ達を睨む。


 こ、恐ッ……。 



「アンタ等、チームに迷惑を掛けている自覚あっか? 追試以上に面倒事を起こしてみろ。全員焼き入れてやる。うち等の目的はヤマトチームを潰すこと。それなのに保護者呼び出しだの、留年だの、喧嘩どころじゃないだのになってみろ。間接的に向こうチームに敗北するんだぜ? そんな状況にだけはさせねぇ。するような輩はうちが直々に制裁を下してやる。特に野郎共、不甲斐ねぇとこ見せやがったら女にしちまうぞ! あ゛あ゛ん?!」



 それってナニをもぎとるってことですか……? 

 嫌だ、想像するだけでも痛いって! あ、あとツッコんじゃいけないけど、母音に濁点はつけなくてもッ……恐いんですけどー!


 響子さんの形相にヨウ達は真面目に教科書を眺め始めた。

 うとうとと眠りの妖精さんとじゃれていたシズも、いそいそ教科書を開け始める。身の危険を感じ、響子さんの逆鱗に触れないよう自己防衛が働いたようだ。真面目に勉強を始めている。偉いぞ、シズ。明日から女になりたくなかったら素直に響子さんの指示に従うべきだ。


 だけどヨウ達はしかめっ面ばっかり。やっぱり勉強はからっきしなのか、何から勉強すればいいか分かってない様子だ。

 俺等もヨウ達が何について分かっていないのか教えてくれないと、どう教えていいやら。タコ沢は自分の分かってない箇所が分かっているから、そこを重点的に勉強しているけど。


 どれどれ、一先ずヨウの下に行ってみるか。「大丈夫か?」声を掛けると、イケメン不良はお手上げだとばかりに肩を竦めた。


「これ、俺の答案なんだが、何が間違っているかちーっとも分からん。ぜってぇ合っていると思うんだが」


 差し出された解答用紙を受け取り、ざっと流し目に内容を読む。

 これは世界史か。何々ハワイ諸国をはじめて統治し、ハワイ王国を建国したのは誰か。ヨウの答え『かめはめ波』


「お前。これは天然でやってんの? 漫画の読み過ぎたと言われなかったか?」


「かめはめ波大王だろう? 合ってるじゃんかよ」


「いやいやいやっ、カタカナでカメハメハ大王だからね! お前が書いたのは漫画の主人公が使う技名! サイア人がハワイ諸国を統治したってか?!」


 「読み一緒だろうよ」これでペケはねぇよな。オマケしてくれてもいいじゃんかよ。

 愚痴を零すイケメン不良の残念具合に溜息である。女の子だって幻滅するに違いない。イケメンでもおばかは論外だよな。

 あまりにも酷い出来っぷりに、教える側も困惑。いきなり手詰まりになった。これは五日以内に範囲を教えきれって方が難しいかもしれない。


「あ……あの、まず皆さんのテストで間違えたところを、ノートかルーズリーフかに写してみてはどうでしょう?」


 ついに見かねたココロがおずおずと案を出した。

 追試は基本的に定期試験と似たような問題が出る。だから、テストで間違えたところを重点的にやれば点数が取れるんじゃないか。ココロはそう思ったらしい。なるほどな、それはいい考えかも。問題をノートに写すだけでも、結構勉強になるしな。


 「それでいくか」ヨウは助言をくれたココロに礼を言った。ココロは嬉しそうに笑みを返す。それは文字通り、花咲く笑顔だ。柔らかい眦に見蕩れてしまう。

 恍惚に彼女の横顔を見つめていた俺は、ふっと我に返ってぎこちなく視線を逸らす。


 軽くかぶりを振って気持ちを霧散した。

 ココロはヨウのことが好きだ。明言したわけではないけれど、以前、彼女はヨウに憧れを抱いていると教えてくれた。羨望を語る表情は確かに好意を滲ませていた。その表情で確信してしまう。ココロはヨウが好きだ。好きだからヨウに礼を告げられて、あんなに嬉しそうな表情を浮かべた。

 いたって普通の少女の見せる笑顔、それは俺の心を捉えるのに充分すぎるものだ。


 こんなことを考えている時点で、俺は自分の感情に変化が訪れているのだと理解してしまう。

 そう、最近の俺は彼女を無意識の内に見ている。何かとココロのことを考えている。目で追ってしまう。ココロとは、ただのチームメートで、同じ地味だから親近感を抱いているだけ。なのに、なんだか妙に意識している俺がいるだなんて。


(調子が狂う)


 ガリガリと頭部を掻いて気持ちを誤魔化す。些少の変化は受け入れそうにないや。


「あ、やべ。ノートもルーズリーフも持ってねえ」


 ココロの提案を素直に受け入れたヨウは困ったと頬を掻いた。

 なあにが困っただよお前。いつもロッカーに置き勉しているじゃんかよ。今日はたまたま数冊、教科書を鞄の中に入れているみたいだけどさ。普段はノートすら持って来てねぇだろうよ。  溜息をつく俺を余所に、他の面子もノートやルーズリーフは持っていないようだ。これじゃあ勉強うんぬんかんぬんどころじゃない。


 追試組ってつくづく世話を焼かすよな。

 ルーズリーフをあげたいところだけど生憎、俺はノート派だ。響子さんやハジメも持っていないようだし。


 中学生組に聞くにも奴等は不在。

 何故なら勉強の邪魔になるからだ。高校レベルの勉強をあいつ等が見てやれるわけがない。かといって此処にいても、俺達に話しかけて邪魔するだけ。なら少しばかり外に出てもらおうと響子さんが二人に日賀野チームの偵察を頼んだ。

 これは一石二鳥だ。勉強の邪魔をしないプラス、日賀野達の様子を探ってもらえるのだから。偵察を怠ったら後で痛い目に遭うだろう。喰えないチームだから仕掛けてくるか……。


「私がルーズリーフを買ってきますよ。ついでに何か食べる物を買って来ます。飲み物と一緒に。根詰めて勉強をしても頭が疲れちゃいますから。それまで間違えたところを教科書で確かめて、アンダーラインでも引いておいて下さい。それだけでも勉強になります」


 思案をめぐらせているとココロがまた案を出した。

 お金は後で徴収するからと微笑む彼女に異論はないけれど……ひとりで行くつもりなのだろうか? 優しい彼女のことだから、きっと全員分のお菓子と飲み物を買ってくるつもりだろう。

 目と鼻の先にスーパーはあるけれど、あそこのスーパーは寂れていて文具は置いていない。だから少し遠出して文具屋に足を運ばなければいけないだろう。非力な彼女に大荷物を持たせる上に、歩かせるのは大変申し訳ない気分になる。



「なあココロ」



 感情よりも先に口が動いた。

 キョトンとこっちを見つめてくる彼女に、「俺も行くよ」ついて行くと自己申告する。

 驚く彼女がとんでもない。ひとりでも大丈夫だと遠慮してくるけど、「いいじゃねえか」響子さんが意味深に笑みを浮かべつつ、俺を親指でさした。


「ココロ、一人じゃ大変だろ? ケイと一緒に行け。こいつならチャリぶっ飛ばしてくれるだろうから、楽チンだ」


「で……でも申し訳ないですし。私、重いですから」


 ぶんぶんとかぶりを振る彼女に、思わず笑ってしまう。


「そんなことないよ。いつもココロよりも体の大きいヨウを乗せているんだから。ココロさえ良ければ、俺も一緒に行くよ。一人じゃ大変だろ? あのスーパー、文具は置いてなかったから少し歩くことになるしさ」


「ですけど」


「あ、もしかして二人乗りは恐い?」


「い、いえ! その、ケイさんを疲れさせる気がしちゃって。あの……私、本当に乗っても良いんでしょうか?」


 畏まって聞かれるとむず痒いや。本当になんてことのないことを、しようとしているだけなのに。

 うんっと頷いて笑顔で返事する。


 するとココロがヨウに見せた、あの笑顔を俺に向けてくれる。

 それはヨウ以上に柔らかい笑顔。錯覚かもしれない。偏見かもしれない。気のせいなのかもしれない。

 けれど確かに、俺の視界に映る彼女の笑顔は花開いていた。満開の花を見ている気分だ。知らず知らずのうちに俺も笑みを零してしまう。早鐘のようになる心臓を無視して、俺も笑顔を作った。ココロは自然な笑顔を作る魔法を持っているのかもしれない。


「ありがとうございますケイさん。お言葉に甘えさせて頂きますね」


 たった一言で、調子に乗ってしまいたくなる。

 気のせいだと思い込みたい。女子に優しい笑顔を向けられた記憶が極端に少ないから、ただただ嬉しいんだ。彼女を一人に着眼しているわけじゃない。異性を意識しているわけじゃない。きっと、そう、きっと。


「大体ひとりじゃ無理だって。ひとり、ふたり分、買うのとはワケが違うんだし」 


 誰にも気付かれたくない感情を隠すように話題を振る。

 「だって」苦笑する彼女に、「それだけ優しいってことなんだろうけどさ」目尻を下げて肩を竦める。これは本音。だってさ、勉強する皆に気を回したり、自分から率先して雑用を買って出たり、チャリを漕ぐ俺に気を遣ってくれたり、優しい子なんだと思う。

 するとココロが頬を桜色に染めて俯いてしまう。まさかそんな反応が返ってくると思わず、俺も頬を掻いて視線を流す。


 これじゃあ、まるで俺が口説いたみたいじゃん。

 友達として言ったまでなのに、下心を含んだ台詞を吐いた気分。異性として見てくれているのか? と、少しだけ期待してしまうけれど、それはないと念頭から振り払う。彼女はヨウのことが好きなのだから。


 チラッと彼女に視線を戻す。

 綺麗な瞳とかち合い、鼓動が高鳴った。それを無視して恥ずかしそうに笑いかけてくる彼女に笑声を零す。

 気持ちを隠そうと思っても、彼女が向けてくれるその笑顔までは誤魔化せない。俺は今、彼女の笑顔を目の当たりにして純粋に嬉しいと思っている。ヨウではなく、俺に向けてくれているその笑顔を、ただただ可愛いと思う俺がいるんだ。



「青春しているところ悪いんだが、俺達、ルーズリーフが必要なんだ。買って来てもらっていいか?」



 !!!



 含みあるヨウの笑声と、意味深な視線と、悪意あるオーラが俺とココロに突き刺さった。

 石化しかけた俺達は、どうにか気丈夫に周囲を見やる。それはそれは面白そうにこちらを観察している不良達がいた。ニタニタしている不良達の面持ちと自分の置かれた現状に気付き、揃って赤面してしまう。


 や、や、やっべぇ。

 なんだこの罰ゲームばりの羞恥は。とんでもないことをしでかした気分になるんだけど。

 べ、べつに俺達は普通のやり取りをしていただけだよ! な、なんだよコノヤロウ! ココロの笑顔に見蕩れちまったのは俺自身の野郎魂が疼いただけで、他の女子がココロとおんなじことをしても、きっと俺は見蕩れちまうんだからな!


 まったくもって素直じゃないことを思いながら、妙な空気を散らすために「行こうか」「行きましょう」行動を開始する。

 だけど皆の悪意ある視線のせいで気が動転してる俺等は方向転換の前に正面衝突。反射的に小さな体躯を受け止めた俺は、受け取られたココロは、もっと気が動転した。


「ご、っごごごめん! ぶつかっちまった!」


「わ、私こそっ、えええっとお怪我はっ!」


 なんてこったい。この距離感パネェ! もはや間隔すらねぇんだけど!

 急いで離れる俺達の顔は熟れたトマトのようだろう。態度で意識していますみたいな行動を取っちまったもんだから自己嫌悪もいいところである。誤解される、こんなんじゃますます誤解されちまう。


 いやでも、弁解だけはさせておくれ。

 いいかい、大抵の地味っ子は異性に免疫がないんだ。中には免疫のある奴もいるかもしれないけど、大半も地味くん地味ちゃんは同性と仲良しこよしするもんだから、異性に対する免疫が殆どない。つまり恋愛には無縁なのだ!

 だからさ、こうやってからかいザマに視線を投げ掛けられてみろ。動揺と羞恥でパニクるぞ!


「気が合うねぇ。テメェっ、ウワッツ! アッブネェだろうが響子!」


 おどけていたヨウの口から悲鳴が上がった。

 どうやら響子さんが持っていた鉄パイプが目前に振り下ろされたらしい。それにすら、構う余裕がない。今は自分のことでいっぱいいっぱいだ。


「お二人さんってもしかて」


 へらへらと笑うワタルさんの、故意的な問いの先が読めてしまった俺はココロを呼んで速やかにこの場から逃げた。

 駆け足で逃げ出す俺達の背に、ワタルさんが続きを言おうとしていたようだけれど、その前に響子さんが鉄パイプをワタルさんに向かってぶん投げていたという。


 金属音の鈍い音をBGMに俺は倉庫の出入り口を目指す。

 ふと彼女の足の遅さに気付きペースを落として素知らぬ顔で腕を取った。瞠目する彼女に、「早く逃げないと弄られるぞ」ぶっきら棒に声を掛ける。「はい」嬉しそうに綻ぶココロを一瞥して、人知れず自分の昂ぶる感情に苦い顔をしてしまったのは俺だけの秘密だ。



 ◇




 ところかわって、倉庫に残された荒川チーム。



「きょ、響子テメェ! 俺の頭をかち割る気かよ! マジ危なかったんだが!」


「ちょーっと酷くない? 響子ちゃーん、鉄パイプ投げるのは酷くないっぷ?」



 危うく頭をかち割られそうになったヨウと、かろうじて鉄パイプを避けることに成功したワタルは口を揃えて抗議している最中だった。

 怪我をしたらどうするのだと主張する二人にも、響子は動じない。寧ろ「喧しい」舌打ちを鳴らして、一蹴する始末である。なんて女だとゲンナリするヨウ達に対し、彼女は新たな鉄パイプを手にして野郎共を見据えた。


「あいつ等に茶々を入れようとすんじゃねえ。ココロとケイの仲をかき乱すような言動はうちが許さねぇんだよ」


 突拍子もない発言に目を点にする被害者二人。

 傍観者になっていたハジメが、おずおずとその意味を問うと、まんまだとおつぼねさまは返した。


「今のやり取りを見ただろう? どう見たってあいつ等は相思相愛、想い合った仲。ココロの片思いが報われる時が来たんだ! 妹分が片恋を抱いていると知って、うちはどれだけやきもきしたか。ケイを見つめて想うだけの日々には涙したもんだ。あいつは健気過ぎる。うちに似やがって」


「……響子ちゃーん、本気で自分を健気と思っているっぴ?」


「ねぇだろ。それ」


 余計なことをヨウとワタルが言ったせいで、会話が一時中断、お局の鉄パイプが炸裂しそうになった。

 どうにか思い留まらせようと機転の利くハジメが会話を無理やり再開させる。「ココロの恋を応援していたんだね?」と。

 般若のような面持ちを作っていた響子は、当然と言わんばかりに鼻を鳴らして凶器を右肩に置いた。


「ココロほど可愛い妹分はいねぇ。姉分として応援するのは当然の筋だ……けどな、ココロは積極的じゃねえ。うちはどうケイにあいつのことを見てもらおうかと悶々悩んでいた。そんな時にめぐってきた機会、ケイがココロを意識し始めた! ならこの機を逃してたまるか。邪魔立てするようなら、本気で女にしちまうぞ」


 響子の形相に降参だとヨウとワタルは両手をあげる。彼女ならば本気で女にしてきそうだ。さすがに性別を変えられるのだけは勘弁してもらいたい。

 しかしなんでまた響子がそれほどまでに二人の恋を庇うのか。過剰に庇い過ぎではないだろうか。放っておいても実りそうな恋だと思うのだが。疑問に思ったハジメがお局に問い掛けると、「あいつ等は初心なんだよ」響子は鉄パイプで軽く自分の肩を叩きながら小さく吐息をつく。


「ああいうタイプは周囲から茶々を入れられると進めなくなっちまうんだよ。自分の気持ちを否定して素直になれなくなる。二人は恋愛に対しては初心なんだよ。どっかの誰かさん達みてぇにセフレを作ったり、一夜だけ過ごしたり、軽い気持ちで触れ合ったり……んなことはできねぇ奴等だ。妹分のココロのためにも、あいつ等の恋、成就させてみせる!」


 力説する響子は燃えていた。姉分として、妹分を想う気持ちがとにもかくにも燃えていた。

 「ココロを泣かしたらケイは半殺し決定だがな」なんて物騒なことを聞いてしまい、他のメンバーは何も言えなくなったりもする。すべてはココロのためらしい。自分の気に入った女であればとことん動く奴だと分かっていたが、ここまで妹分想いだと周囲は苦労する。


「あくまで二人を見守る側に立つの?」


 弥生の質問に響子は頷く。

 「カバーするところはカバーするけどな」そう付け足して。


「あいつ等を見ていると、どーしてもくっ付けたくなるんだよ。いいじゃねえか、チームにああいう微笑ましい奴等がいても。目の保養になる。うち等の面子はろくな恋愛してねぇ奴が多いしな」


 自嘲する響子自身も、ろくでもない恋愛をしていた。中学時代はエンコーというものをしていたのだから。

 同調するヨウもまたろくでもない恋愛をしていたな、と思い出に浸る。恋人を作ったこともあったが長続きはしなかった。それに、あれは果たして恋愛、といって良いものだったのだろうか。別段性欲が強かったわけじゃないが、中学時代にひとりだけセフレを作っていた。

 セフレだった彼女は今、向こうのチームにいる。ヤマトのセフレだと聞いているが――自分達の関係は何だったのだろう?


(俺の恋愛を振り返るとケイには円満にくっ付いて欲しいと思う。普通に恋愛して欲しい気持ちが出てくる。あれか、俺にも舎兄心って奴が出てきているのかもしんねぇ)


 しかし、あの調子じゃいつ実ることやら。ヨウは人知れず苦笑いを零したのだった。



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