拳は真剣ていうカナタさんの発想に僕はちょっと感動してる
カナタさんには隠し事は通用しなかった。マスクをつけて登校してきたカナタさんに上邑さんが説明した。
「カトオくんは勇敢だった。本当に男らしかった」
「でも、泣いてしまった」
「違うぞカトオ。泣こうがどうしようが敵と対峙したお前は男だ。小橋なんかより人間として数段レベルが上だ。ただ、このままだとみんな受験どころじゃなくなるな」
「ううん、いいよ。気にしないよ」
「上邑、そうじゃないんだ。どう考えたって正しいのはカトオや上邑たちだ。正しい者が本当は強いんだ、ってことをはっきりさせとかないと、受験の土壇場で力が出せない。上邑はワニダに行きたいんだろ?」
「うん・・・行きたい!」
「ならやらなきゃ。おい、小橋」
「あ? なんだよ」
「お前は男か」
「何?」
「拳でなく平手しか使えないお前は男なのか、って訊いてるんだ」
「はあ? カトオは平手すら使えずに泣いたぞ」
周囲の男女が爆笑する。カナタさんさんは冷たい目で小橋だけに話す。
「竹光抜いた頓馬な相手に真剣使う侍なんていないよ。カトオは侍なんだよ」
「ぷっ。こんな情けない奴が侍な訳ねーだろ」
「ならお前はカトオが拳・・・真剣抜いたら真剣で対峙できるのか」
「当たり前だろ。一刀両断だよ」
「言ったな。それこそ二言はないな。なあ、来週男女合同の柔道の寒稽古あるだろ」
「ああ」
「お前5人用意しろ。柔道部入れてもいいぞ。こっちも5人用意する。団体戦やろう」
「は? カナタ、お前バカか? そんなことして俺に何の得があるんだよ」
「得なんかさせるつもりある訳ないだろ。負けたらお前ワニダ受けるのやめろ」
「はあ? なんだよ。じゃあ俺が勝ったら上邑がワニダ受けないのかよ」
「これはわたしの提案だからわたしが賭ける。お前のチームが勝ったら、わたしは大学受けない。高卒で働く」
おおー? と教室がどよめいた。
「小橋。女のわたしがここまで腹決めてんだよ。男のお前が恥ずかしい真似できないよな」
「な・・・」
「別にどっちでもいーぞ。受けなきゃお前のクラス内カーストが急落するだけだから。ねえ、腰巾着のみなさん!」
ああ? 小橋は別にリーダーじゃねーよ、とかなんとか教室がざわついてる。
「は。カーストのガバナンスなんてこんな程度か。笑える」
「分かった。団体戦やろう。けどカナタ。お前のチーム、たぶん5人集まんないぞ」
「別にいーよ。わたし1人でもやるから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます