壱ノ不思議 廊下の怪(31p)

 私は臆病な自分をクククッと笑うと、居間の襖を開けた。

「お帰りなさい」

 雪絵お姉さんは私の方を見るとヒラヒラ手を振る。

 雪絵お姉さんは食事を終えて、テレビを見ていた。

 バラエティー番組の呑気な声が部屋に響いている。

 私はテーブルの横に置いてある、おひつから少しだけご飯をよそい、カレーが跳ねない様に注意しながらお皿に盛った。

「何だか、おかわりの度に台所へ取りに行くって大変ね」

 私の言葉に、雪絵お姉さんは、テレビに夢中らしく、私の顔も見ずに「別にそんな風に思った事無いけど」と素っ気無く答える。

 雪絵お姉さんのテレビ観賞の邪魔をしたら悪いから、黙ってカレーを食べた。

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