壱ノ不思議 廊下の怪(17p)

 雪絵お姉さんはその襖を開けると顎をクイッとさせて私に中に入る様に促す。

 私は部屋の中に、そっと入った。

 八畳ほどの板敷きの部屋だ。

 飴色の床に、準和風のこの家には相応しくない洋風の家具が置かれている。

 ベッドにクローゼット、それに可愛らしい勉強机。クマやウサギの縫いぐるみまで置いてあり、極め付けは、硝子で出来た鈴蘭をあしらった小さなシャンデリアだ。それがイミテーションでない事は、灯った明かりから分かる。

 誰がどう見ても女の子の部屋だ。

「雪絵お姉さん。この部屋って……」

「フフッ。私が昔使っていた部屋よ。少女趣味でびっくりしちゃうでしょ? ここは、今は使っていないんだけど、家具も今では中々手に入らない良い物で、処分せずにそのままにしているのよ。その勉強机、この間、たまたまインターネットで見たらオークションで三十四万円で落札されていて驚いたわ。

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