壱ノ不思議 廊下の怪(10p)

 窓の無い暗い廊下を雪絵お姉さんの後に続き、玄関まで引き返す。

 そして、玄関の正面に有る何だかよくわからない生き物を描いた襖を開けて中に入る。

 中は四畳半の畳み敷きの部屋だ。

 この部屋は控えの間と呼ばれていた。

 来客を待たせておく部屋だと聞いたけれど、私はこの部屋で待たされた事は過去に一度として無い。

 この部屋には家具も何も無く、ただの部屋と言うのがふさわしい。けれど、欄間には木彫りの美しい花の彫刻が施してあり、それが私を浮かれた気持ちにさせた。

 私達は控えの間の、入って来た襖の右側にあるもう一つの襖を開けて、廊下へ出た。

 この廊下は、さっき通ったおばあちゃんの部屋へ続く廊下の向かい側にある。

 この廊下へは控えの間を通らなければ出る事は出来ない。

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