なんと耳が!

 目が覚めると、わたしはベッドで寝ていた。


「えっ、どうゆうこと? 授業中だったハズなのに……」


 スマフォで日時を確認すると、どうやら今日の朝に戻されたらしい。

 先ほどの女神様が出ていた夢を思い出す。


「まさかね……」


 とりあえず耳を触ってみたりする。

 あれ、あれれ、いつもと違う。普通の人のようだ。


 わたしは跳ね起きると、玄関の廊下の鏡へと飛ぶように目指した。

 鏡に到着すると、自分の耳を確認する。するとなんと普通の耳だ。

 マジマジと眺めるのだが、どこからどうみても普通の人の耳だ。


 鏡の前で、あれこれと確認をしていたら、母さんが通りかかった。


「あんた、何やってるの?」


「母さん、耳が。耳を見て!」


「何も変なことは無いけど、どうかしたの?」


 おお、変じゃないんだ。いつものわたしに取ってはとても変だけど、変じゃないんだ。


 これはアレだ。この世界ではわたしは人間の耳なんだ。

 あれ? それだとわたしは今まで人間じゃないみたいだな。

 イヤイヤ、わたしは普通の人間ですよ。

 でもそうすると今までのエルフ耳もふつうの人間の耳という事になるのかな?


 混乱してると、母さんから

「早くご飯を食べなさい」

 と叱られた。寝ぼけてるとでも思われたのだろう。


 まあ、いいや。今日から私は普通の人間なんだ。


 食事を済まし、制服を着て、準備を終えると、タッくんとヨネちゃんが来るまで鏡をのぞき込む。

 何度確認しても、普通の耳のわたしがそこにいる。顔が自然とニヤけてしまう。


 母さんが少し心配そうな顔をしていたが、気にしないでおこう。


 しばらくすると、チャイムが鳴った。

「行ってきます」と声を掛けてわたしは玄関から表へと飛び出す。



 外に出ると、いつもと変わらない二人が待っていた。


「おはよう、タッくん、よねちゃん」


「朝から機嫌がいいな、あやこ」


「何か良いことでもあったの、あやこちゃん」


 あやこ、あやこ、どこかで聞いた名前だな。でも誰だろう?

「……あやこさんという方は、どちらにおりますか?」


「だっ、大丈夫かオマエ」

 タッくんが本気で心配した顔をした。


 あっ、霜沢しもざわ綾子あやこのあやこか、わたしの本名じゃないか。

 久しぶりに名前で呼ばれたので、自分だとは気がつかなかった。

 いつも『エル子』としか呼ばれていなかったからなぁ。いかんなこれは。


「あっ、はい。あやこはわたしでしたね」


「大丈夫? 具合が悪いようなら、お休みしたらどうかしら」


 ヨネちゃんも心の底から心配している。


「大丈夫、大丈夫、ちょっと慣れてないだけだから」


 そう言うと、二人はとても不思議そうな顔をした。


「さあ、行こう。遅刻しちゃうよ」


 わたしは二人をせかすよう促した。

 やばいな、早くこの環境になれないと……

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