右眼の百色

菜の花の葉の緑の細胞の中の葉緑体

(1)、気づいた。

僕はいつも通りに布団から頭を起こし、寝惚け眼を、その右半身の側を右手で擦ろうとした。

ふと、そこに違和感を感じて動作を止めた。

別にそこに変な動作があって、自分の行動が恥ずかしくなった訳では無い。

何かが変わった訳でもない。

――ただ一つの事柄を、除いては。








…その右目には、小さな桃色の蕾が、咲いていた。

あれから僕は驚いて唖然となったあと、自分でもびっくりするほどの速さで洗面所へ駆け込んだのだ。

そして鏡を見て、また唖然とした。その鏡に映ったものが、前述したそれである。

「…は?え?…どういう…」

僕、百鍍は、阿呆みたいな声で、阿呆みたいな言葉を、その唇から零した。




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