パネル 6〜佐原俊朗
第21話 接点
これまで調べてきた内容で、引っかかる所のみを抽出してみた。
1.香川警備保障が襲撃されたと思われるほぼ同時刻、ライブ会場の爆破事件との関連性
2.その事件が両方とも有耶無耶にされている件、またその理由
3.1度ホームレスにまで落ちた藤原景子が、そのホームレスたちと店を開店、その開店資金
4.藤原景子と、堀内明子、浅野夫妻との関係性
5.また「きぼうのもり学園」の火村誠との関係性
一見無関係に思えるこの5つの事象が、全くの無関係に思えない。というよりは、この事柄が関係性があるように、誰かに促されているように思えてならない。
昨日火村誠から向けられたあの視線が思い出される。あの視線にはどんな感情が秘められているのか。
元はと言えば、読者から送られてくるメールだ。それがなければ、香川警備保障の襲撃事件なんか知らなかった。それが何故、あのライブ会場の爆破事件と繋がったのか。そうだ、浅場直樹がみつけてきたSNSだ。あの橘孝臣とかいう警備員だ。
あの香川警備保障があった現レコーディングスタジオの周りに聞き込みをしていて、警視庁が周りの店舗の警備会社などのフォローに関与している。この2つの事件が有耶無耶になっているのは、警視庁が関与しているからということなのだろうか。もう踏み込むべき事案ではないことはわかっている。
だが、何かに導かれている。それはなんだ。何故こういう流れになっている。
俺はあの日、いつものように編集部で寝ていた。目が覚めてテレビを点けたら、スポーツ系のバラエティ番組が放送されていた。
アイドル扱いの女子プロゴルファーが、スラッグアウトのゲームで、1枚1枚丁寧にパネルを打ち抜いていた。結局パネルを2枚残して、パーフェクトにはならずに終わった。
俺はこの事案のパネルをいくつ打ち抜いたところなのだろう。もしかしたら、1枚もパネルを打ち抜いていないのかもしれない。
バーに当たっただけで、パネルを打ち抜いた感触がない。
もしかしたら、誰かが意図的に促しているとしたら、それは誰かが裏から打ち抜いたように見せる仕掛けのヤラセなのかもしれない。
ダメだ。思考が、まとまらない。まとめるには、何かが足りない。
そこへきて、今度はあの動画だ。それが堀内明子だという。もう、わからない。
仮にだ、仮に堀内明子のグループが香川警備保障に襲撃するために、香川警備保障の人員を薄くするために、ライブ会場で爆破事件を起こしたとする。それがなんのためなのかが、ピンとこない。
「直樹」
俺は浅場直樹を呼んだ。浅場直樹は、まだ太田が編集長を務める今月の最終刊のために、つまらない記事を書くのにパソコンに向かっている最中だった。
「なんすか?韮沢編集長(仮)」
「なんだ、(仮)って。歳上をバカにしてんのか?」
「いや、だってニラさん、編集長なんて本当は嫌でしょ。たとえ1ヶ月だとしたって、柄でもないって思ってんでしょ」
こいつの方が俺のことをわかっているのかもしれない。ただ俺が浅場直樹を呼んだのは、そうやって、からかわれるためではない。
「お前の幼馴染の、誰だっけ?そいつに会えないか?」
「ああ、トシローですか?いいですけど、マジであいつ、変な奴ですからね。友達じゃないですよ。幼馴染ってだけですからね」
そんなことは、どっちだっていい。
俺が知りたいのは、香川警備保障と堀内明子の接点だ。足りないのは、多分それだ。
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