第3話
デートの始まり。車で来てくれたあなたは、当然のように私を助手席に乗せる。オシャレだね、なんて少し照れながら言ってくれた。普段そんなことを恥ずかしがって言わないあなたからそんな言葉を聞けて、デート以前に嬉しくなった。あなたに、どこに行くの?と聞けば「着くまでの秘密」なんてはぐらかされた。その後、目にした景色は、私が前から一緒に行きたいと言っていたテーマパークだった。あなたはちょっとこぼした私の言葉でさえ拾ってくれた。
「ほら、お互いに忙しくて、一日一緒ということが最近無かったから‥‥。」
あなたはそんなことを言った。
「嬉しいよ!ほんっとにありがとう。」
だから、私は精いっぱいの感謝を伝えた。
二人で恋人つなぎをして、色んなアトラクションに乗って。あっっという間に夜が近づく。そろそろ帰る?という一言を言おうとした瞬間。
「夜ごはん。ここの中にあるレストランに行こう?」
あなたはもっと予想外の一言で空気を震わせた。
「うん。分かった!でも、ほんとにいいの?」
「誘った日すぐに予約したんだよ。」
あなたは少し得意げだった。そんな横顔を見ながら、レストランへ向かった。そのレストランはテーマパークの中にあるから、という理由付け以外でも有名なレストランでこの近郊に住んでいれば、テレビなんかで耳にしたことがあるような場所だ。そこでも会話は途切れない。コースなんていつぶりだろう、なんていう感情はどこかへ消えて。普段なら食べきれないコースを最後まで食べた。あとはデザートです、と言った店員さんが会釈をして奥に消えていく。そこから少し時間が過ぎる。まだかな、なんて心の隅で思った瞬間。私たちのテーブル周辺の照明がフェードアウトして落ちていく。
「坂本紫生さん。僕と、結婚してくれませんか?」
そんな幸せな言葉と同時に、指輪の入ったケースを差し出すあなたが隣にいた。
「私でよければ…。よろしくお願いします。」
周りが明るくなる。いつの間にか店員さんが来ていた。
「お幸せに!」
そんなコメントをしてくれて。彼はあからさまに照れていて。周りにいたお客さんが拍手をしてくれて。私たちへのメッセージが寄せられたデザートプレートが置かれて。幸せな空間だった。あなたは、サプライズをするタイプでもないのに。
「ありがとう。こんな幸せな空間を私にくれて。ありがとう、大好きだよ。」
「僕もだよ。ありがとう、大好きだよ。」
そんな幸せなデートをした。
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