第16話 大学2回生、3月

大学2回生、3月。


大学入学から2年間、美雨ちゃんは頻繁にマンションに来てくれた。

それで、夜には俺が送っていく。


俺が大学2回生、美雨ちゃんが高校3年になってからは、俺の部屋で受験勉強をした。

無事美雨ちゃんも、俺と同じ学部に合格。

・・・美雨ちゃんも合格順位でキリ番を踏んで、代表で何か読まないといけなくなったのはご愛敬。


4月からは、家賃節約の為、美雨ちゃんとルームシェア。

幾ら親友の兄とはいえ、本当に良く信頼してくれていると思う。

・・・家賃もそうだけど、時間や交通費の節約も大きいな。


「おにーさん!」


美雨ちゃんが抱きついてくる。

呼び方は、先輩からおにーさんに戻ってしまった。

また4月からは変わるのだろうか。


「美雨ちゃん、今日も可愛いね」


もぎゅ


本当に大きくなったなあ。


「や、可愛いとか・・・またそんな・・・」


・・・


「と言うか、外でやめて貰えませんか?本当にお兄さんは救いの無い変態ですね」


ドスを効かせた声で言われる。


「ごめん・・・思わず」


「まったく・・・」


こてん


ぷくーと膨れたあと、顔を胸に埋めてきた。

・・・可愛い・・・


2人で住む事は、俺の親も把握している。

それにしても、うちの親は時々おかしい。

最初に報告した時も、


「孫の顔を見るのは楽しみだけど、人生設計はちゃんとするように。大学は出ておきなさい」


と、今それ関係ないよね、って事を言ってきた。

俺も美雨ちゃんも、意味が分からず、苦笑い。


美雨ちゃんの両親も、了承済みだ。

娘の親友の兄とは言え、信頼し過ぎだと思う。

それだけ凛夏が凄いって事なんだけど。


そう言えば、美雨ちゃんの両親も、最初に報告した時、おかしな事を言っていた。


「孫の顔を見るのは楽しみだけど、出来れば美雨が卒業し、きっちり形式を整えて、それからにして欲しい。私達にも心の準備もあるしね。無論、君は信頼しているが・・・それでも、親として言わせて貰うよ」


つまり、悪い虫がつかないように見張れと。

いや、美雨ちゃんをもっと信頼してあげて。

自分でそこは判断出来るよ!


・・・無論、同意無く美雨ちゃんを襲う輩がいれば、排除するけど。

高校剣道全国大会3連覇を舐めるな、って奴だ。

美雨ちゃん自身、空手の全国大会連覇してるから、大抵は大丈夫だけど・・・でも、最近色々有るしね。

うん、頑張って守ろう。


・・・おかしな事でも無かった。


「美雨ちゃん、君は俺が守るよ」


「ふえ?!」


美雨ちゃんが驚いて、俺を見上げる。

しまった、口に出た。


「はい・・・宜しくお願いします」


くてん


さらに力を抜いて、もたれ掛かってきた。

倒れない様に、強く抱き締めた。

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