個人的おすすめ作品

１位　あなたの街の都市伝鬼!

２位　エスケヱプ・スピヰド

３位　侵略教師星人ユーマ

　１位の「あなたの街の都市伝鬼!」は都市伝説をもとにしたお話。みんなも一回は聞いたことがあるような都市伝説の登場人物たちが美少女になって主人公に寄ってきます。コメディ要素は強めですかね。

　文章もテンポがよくて読みやすかったです。こういうギャグ要素が強い小説にはこういうテンポのいい文体が合っていると思わせられた一作でした。

　２位の「エスケヱプ・スピヰド」は大きな戦争が終わったあとの世界でサイボーグの主人公がヒロインと仲を深めながら、過去に自身を打ち負かした宿敵に再戦を挑むお話です。主人公とヒロインの関係や戦闘描写がうまいと思いました。さすがは大賞といったところでしょう。

　ロボット系の小説ということですが、主人公たちが操るメカは昆虫をモチーフにしています。昆虫って強いなぁ、と思わせられた一作でした。

　３位の「侵略教師星人ユーマ」は地球に異星人が居座ってしまった世界で、自称宇宙人の教師がヒロインの学校に教師として赴任してくる物語です。ヒロインは筋金入りの宇宙人嫌い。しかし、その自称宇宙人の教師はすごいいい先生で他の生徒からは慕われることになります。そんな周りの評価と自分の意地がぶつかり合いながら接する宇宙人主人公とヒロインのやり取りは必見。とても面白かったです。

その他の作品の感想

「ウィザード&ウォーリアー・ウィズ・マネー」：カードゲームとバトルが融合したような競技で戦うお話。階級によって人々が住むところが違うといったような社会に問いかけているような設定にも注目。

「勇者には勝てない」：別世界で戦った勇者と魔王と中ボスの三人が私たちの住む世界に生まれ変わったお話。勇者は別世界のことを忘れているが、それでもその力は本物。勇者と魔王の間で右往左往する中ボスたちを見て笑い転げましょう。

「月だけが、私のしていることを見おろしていた。」：もうすぐ三十歳になろうかという女性が主人公。恋人とも別れ、占い師にはこの一週間で新しい恋を見つけないと一生独身と告げられてしまう。そんな独身女性の一瞬間を描いた一作。

「ミニッツ〜一分間の絶対時間〜」：一分間だけ相手の心が読めるという特殊能力を持つ高校生が主人公。彼はその能力を使って生徒会長になろうとするが……。騙し合い化かし合いの心理戦が好きな人にオススメ。

「明日から俺らがやってきた」：未来を変えるために主人公のもとに未来の主人公がやってきたお話。受験の未来か、推薦の未来か、それとも第三の道を進むのか。恋愛も絡んでハチャメチャな高校三年生を見たい人にオススメ。面白かったです。

総評

　第１８回となる今回の電撃大賞の作品は、「ああ、ラノベだな」という感じのラノベっぽいラノベが受賞した印象でした。さすがにメディアワークス文庫賞は少し毛色が違いますが、電撃文庫で刊行された作品はほんとうにラノベっぽい作品だと思います。

　ここだけ聞くと何を当たり前のことを言っているのかと思われるかもしれませんが、今まで過去の電撃大賞を読んできた私としては、結構意外な結果でした。電撃文庫大賞と言えばラノベの賞の中でも幅広いジャンルの話を受賞させていることが特徴の一つとなっている賞なので、普通の結果が逆に普通じゃないのです。

　この１８回より遡ると電撃文庫大賞でも堅実な作品が増えてくるのか、それともただ１８回が特別なだけだったのかわかると思います。そこはこれからの研究結果を待ちたいところです。

　作品の話をすると、私がオススメ一位にした「あなたの街の都市伝鬼!」は三巻で終わっているみたいなんです。面白いのにもったいないな、と思って作者である聴猫芝居さんが他にどんな小説を書いているのか調べてみると、何と「ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?」の作者だったのですね。寡聞にして知りませんでした。しかもこれ、現在までで十九巻も出ているというね。やっぱり受賞作からして面白かったもんなぁ、と思った次第であります。受賞した人がこうして活躍しているとなんだかうれしくなる私でした。