第19回電撃大賞

個人的おすすめ作品


1位 エーコと【トオル】と部活の時間。

2位 サマー・ランサー

3位 失恋探偵ももせ




 1位の「エーコと【トオル】と部活の時間。」はとある事件をきっかけに学校の中で浮いた存在になってしまったエーコと人体模型のトオルも物語。ある日エーコの周りで不可解な人体発火事件が起きる。その事件の謎をエーコはトオルと協力(?)しながら解き明かしていく。

 物語中に科学的な話も出てきますが、特に小難しい話という印象もなかったです。科学と文学がうまく組み合わさった作品だと思いました。


 2位の「サマー・ランサー」は槍道という架空の部活動の話。剣道のようなスポーツですが、剣道のように竹刀を使うのではなく、代わりに槍を使うのが特徴的です。

 読んでいるときは架空のスポーツとは思わずにすごく興奮しながら読んでいたのですが、あとがきでそのことを知って大変驚きました。架空のスポーツを作ってしまうというその想像力に感服です。


 3位の「失恋探偵ももせ」は失恋した依頼者の依頼をもとにどうして失恋してしまったのかの謎を解いていく物語。謎を解く小説はいくつも読んできましたが、こういう形のミステリーは初めてだったのでなかなか興味深かったです。

 謎を解いていくにしたがって変化していく主人公とヒロインの心情にも注目です。



その他の作品の感想


「きじかくしの庭」: 教師である主人公がきじかくしという植物を育成している裏庭で様々な人と出会いながら成長していく物語。学校内だけではなく、学校外でも話は広がっていきます。


「アリス・リローデッド」:しゃべる銃とアリスというヒロインが運命付けられた悲劇を阻止するために戦う物語。銃の視点で進む小説というのもなかなか斬新でした。


「明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。」: 一日おきに主人公の人格がヒロインと入れ替わる特殊な状況に陥ってしまった物語。シリアスな話と思っていたら急にギャグが来るので油断ができない。気を引き締めて読みましょう。


「塔京ソウルウィザーズ」:塔京というどこかの首都を想起させる都市で主人公とケモミミのヒロインたちが魔法の修練に勤しむ物語。ケモミミが好きな人にオススメ。


「路地裏のあやかしたち 綾櫛横丁加納表具店」:表具師というあまり知られていない職業と妖怪たちとの生活を描いた一作。問題を解決するキーはやっぱり表具。さて、表具とはいったい何でしょう?




総評

 いくつかのレーベルの新人賞を読んでみて戻ってきた電撃大賞ですが、やはり電撃大賞は幅広いジャンルの受賞作であふれていると思いました。ただジャンルが多岐にわたっているというだけでなく、一つ一つが個性的です。ほかではなかなか見られないような小説に出会えるのはやはり電撃大賞しかないと思いました。

 今回特に注目したいのは私がオススメの二位であげている「サマー・ランサー」という作品です。スポーツものはラノベでは鬼門の一つと言われているようですが、これはさらにそのスポーツを創作してしまうというものでした。想像力を働かせるのは小説家として当然かもしれませんが、これには私も驚きでした。このように鬼門と呼ばれるものでも少し形を変えれば意外と勝負できるかもしれないという可能性を示してくれた作品だと思います。このような作品が受賞できるはさすが電撃大賞といったところでしょうか。

 19回は応募総数長編短編合わせて6000を超えています。電撃大賞がもっとも注目された時期といえるかもしれません。数多くの作品の中から選ばれた小説を読むのも勉強になるでしょう。

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