世界征服専門コンサルタント・エイコ

ころもり

第1話 整理整頓

エイコは地方の零細企業に事務員として勤務している。これといった趣味もなく、学生時代の友人との付き合いは疎遠になり、恋人もいない。職場と家の往復を繰り返す日々を送っていた。

30代を目の前に控え、果たして自分はこのままでいいのか悶々としていた。


そう、あの日までは…。


「あなたは今日からスーパーヒロインです。世界征服を企む秘密結社が怪人をどんどん送り込んでくるので、敵をやっつけてください。」


はぁ?


誰だって突然こんなことを言われたら呆れるだろう。初めはまともに取り合わなかったが、何日も家の前で待ち伏せされて説得された。ついに警察に相談しようとした日、わたしは怪人と出会ってしまった。


「ふはっはっは~!貴様が俺様の相手か。こんな小娘なんぞすぐにへし折ってくれる!」


セリフだけ聞けば身震いするだろう。

だがこの怪人には決定的な弱点があった。


「あんた、なにそのカバン。」

「え?か、かばん?」


怪人はなぜか小さな手さげカバンを持っていて、なぜか荷物がパンパンに入っていた。

よーく目を凝らして見ると、半年前ほど前の日付がついた領収書があった。


「あんたそれいつ買った軍手の領収書なの?領収書の宛名が秘密結社ってことは経費で落としたいの?なら早く出さないと!」

「なに?軍手の領収書だと…。あっ!!こんなところにあったのか!先日買ったものの領収書が見つからず経理部に早く出せと言われていたのだ!」

「先日って日付じゃないでしょ!半年くらい経ってるじゃない!ていうか他にもごちゃごちゃ書類が入ってるじゃないの。ちゃんと日頃から整理整頓してないと、探すのに手間取って仕事の効率が悪くなるでしょ。ちょっとそのカバン全部見せなさい!」


カバンをひっくり返し、いるものといらないもの、いるものでもすぐに処理するものとまだ期限に余裕があるものを仕分けした。

ついでに、たまたまわたしが持っていたクリアファイルもあげて、これに整理整頓して書類を入れること、カバンは書類に合う大きさのものを使用することを教えた。


怪人はお礼を言い、わたしに頭を下げてその場を去った。


こうして町は平和を取り戻した。


これがわたしの使命。

世界征服を企みやってくる様々な怪人との争いが今日もまたやってくるのだ。


やがてそれがわたしの運命を変えていくことを、この時はまだ知る由もなかった…。

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