02

「兄様、私、決めたわ。彼と一緒になる」

 妹の決意の眼差しに、だが兄は不安を残す。

「彼の中に蓄積された罪は重い。繋がれば、お前もただでは済まない筈だ」

「分かってるわ、覚悟は出来てる」

 心配する兄の言葉にも、妹の瞳が揺らぐことは無い。

 だって、同情で彼を選んだわけではないのだから。自らの心に正直に向き合って、その奥底から彼を求めた。

 その『罪』は、彼自身の罪では無い。彼はあらゆる罪を背負わされただけの、言わば人柱だ。負わされたその身は、か細く弱い、優しく暖かい心の持ち主。

 だけど人柱として負わされた罪は蓄積し、やがてその弱い身体を蝕んだ。

「彼と共に生きたいの。だから私が、彼の罪を引き受けるわ。私にはそれが出来るのだから」

 生まれ持った能力は、とても大きな力だった。優しい使い方が出来ると知った。ならば躊躇うことは無い。

「その罪によって、お前の力は封じられる。寿命も大幅に削られるだろう。それでもか」

「それでもよ」

 いつも兄の後ろをついて回っていた。兄が一番だと笑っていた。そんな妹が、ここまで一個人として覚悟を決めた姿を見るのは初めてだ。

 ふっと、兄は柔らかく笑みを見せた。

「だったら、好きにすればいい。俺はいつだって、お前の味方で居よう」

 昔も、これからも、ずっと変わらずに。

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